さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.57
    2016/8/30UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ルポ資源大陸アフリカ 白戸圭一/朝日文庫

    本書は2004年から2008年の4年間、毎日新聞の南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ特派員として、サハラ砂漠以南48カ国をたった一人で担当した著者によるノンフィクションだ。「暴力が結ぶ貧困と繁栄」をテーマに、アフリカに強く関心を持つことのない日本人にアフリカへの関心を持ってもらおうという想いで描かれている。
    アパルトヘイト後格差が広がり続けた南アフリカ。石油産業によって国内がズタズタにされているナイジェリア。鉱物資源の存在があることで「世界の火薬庫」へと突き進んでいったコンゴ。著者はこういった、日本国内では強い関心を抱かれにくいテーマに、かなり危険な取材を敢行して切り込んでいく。
    これらの問題は、先進国に生きる僕らとは無関係ではない。先進国の生活は、アフリカなど発展途上国の生活を犠牲にして成り立っている。僕らの生活が、日本から遠く離れたアフリカでどんな現実を引き起こしているのか。僕らはそれを知るべきではないだろうか。

  • no.56
    2016/8/30UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ヤノマミ 国分拓/新潮文庫

    ヤノマミ族とは、現在もアマゾンの奥地で原初の生活を続けている少数民族だ。1万年以上も、同じ生活を営々と続けてきた。本書は、NHKのディレクターとしてヤノマミ族の集落に計150日に渡って同居し続けた著者が描くノンフィクションだ。
    著者が同居することになったワトキリという集落が文明社会と初めて接触したのは1970年代になってのことだ。彼らは、文明社会との接触が少数民族を駆逐していった歴史を知っている。それでも彼らは、著者らを集落に受け入れた。
    様々な儀式や伝統が、彼らの生活を合理的に成立させるために最適化されている。それは、僕らの常識からすれば信じられないものばかりに映る。文明社会の論理からはみ出す様々な価値観が、人間として生きること、人間として死ぬことについて、様々な示唆を与えてくれる。

  • no.55
    2016/8/30UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    許されようとは思いません 芹沢央/新潮社

    あたたかい短篇をお望みの方にはおすすめできません。読後は決してよくありませんし、ある意味でどの短篇も怖さを感じずにはいられません。どんでん返しの結末さえも、日常に潜んでいる、現実にありえないとは言い切れないのが怖いのです。次の作品ではどんな風に「人間」を書いてくれるのか、次作が気になります。

  • no.54
    2016/8/30UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    リボルバー・リリー 長浦京/講談社

    海外冒険アクション小説が好きな方にも、きっと満足して頂ける本格ハードボイルド小説登場です!しかも主人公は女性。16歳から諜報員として訓練され「最も排除すべき日本人」とまで呼ばれたリボルバー・リリーが家族を殺害された少年と共に、帝国陸軍1000人を相手に挑んだ六日間。どんな激しい闘いであろうと、新しい洋服に身を包みハイヒールを脱がないリボルバー・リリー圧巻です。女が強くて何が悪い?

  • no.53
    2016/8/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ピンポンさん 城島充/角川文庫

    ノーベル平和賞をもらってもおかしくない、と言われた日本人卓球選手がいたことを、あなたはご存知だろうか。荻村伊智朗、その人である。
    新聞に、20世紀を代表するスポーツ選手というアンケートが載った時、荻村は16位の中田英寿を抑えて15位にランクインした。文化大革命によって世界から孤立した中国を国際舞台に引き戻したのも荻村であり、当時の中国の指導者である周恩来からも絶大な信頼を得ていた。卓球王国・中国を生み出したのも、荻村なのだ。
    高校一年生の時に卓球を始め、たった5年7ヶ月で世界一となった圧倒的な練習量。選手としては毀誉褒貶がある独特のスタイル。常に卓球界、スポーツ界全体を考えて行動し続けた器の大きさ。あまりにも偉大なスポーツ選手だ。
    1994年、荻村が62歳で亡くなった際、メディアは荻村についてこんな風に伝えた。
    <日本スポーツ界は天才的才能のリーダーを失った><戦後日本の希望の星><「スポーツを通じ平和」が信念>
    この凄い男の人生を、是非あなたにも知ってほしい。

  • no.52
    2016/8/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    僕たちはいつまで
    こんな働き方を
    続けるのか? 木暮太一/星海社新書

    マルクスの「資本論」と言われると、難しそう、つまらなそう、と感じる人が多いだろう。僕もそうだ。しかし著者は、この「資本論」の中の考え方こそが、サラリーマンとして生きていく上で最も重要なのだ、と語る。本書は、「資本論」をベースに、「給料はどのように決まるのか?」「会社の利益はどのように生み出されるのか?」などを明らかにし、それらを元に、「我々はどんな働き方を目指すべきか」という提案をしてくれる作品だ。「資本論」をベースにしているとはいえ、難しい話はまったくない。既に社会に出ている人にももちろん読んでもらいたいが、中学生・高校生・大学生など、まさにこれから社会に出て行く人が、自分の将来の生き方を考える上で知ってもらいたい一冊だ。

  • no.51
    2016/8/23UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    夏空に、きみと見た夢 飯田雪子/ヴィレッジブックス文庫

    近くにいたら「嫌な女の子」って思ってしまいそうなら高校三年生の悠里が、見知らぬ男子高生から頼まれ、悠里に片思いしていた顔も知らない広瀬天也の葬式に参列したことから始まる悪夢の様な出来事と優しい時間。触れ合うことも手をつなぐことも出来ない。それでも好きを止めることは出来ない。まっすぐすぎる想いに涙が止まらない。純粋な気持ち思い出させてくれる、夏の一冊です。

  • no.50
    2016/8/23UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    十八の夏 光原百合/双葉文庫

    「朝顔」「金木犀」「ヘリオトロープ」「夾竹桃」4つの花が彩る短篇集。表題作「十八の夏」恋しいと憎い。相反する自分ではどうすることが出来ない想いに捕らわれた女性と十八の少年が辿り着いた切ない真実。最後の一文が与えてくれる夏の余韻を感じて下さい。そしてほっこりあったかい気持ちにさせてくれる、秋におすすめ「ささやかな奇跡」…私がこの本に初めて出会ったときは、本屋で働けるとは思っていませんでした。この奇跡、素敵です。

  • no.49
    2016/8/17UP

    フェザン店・松本 おすすめ!

    地方創生の罠 山田順/イースト新書

    「地方創生はカタチを変えたバラマキである」と主張する著者。ゆるキャラやB級グルメを効果なしと切り捨て、プレミアム商品券の欺瞞を説く。地方にいながら世界と直接つながれる現代において、危機感に付け込んで右から左へと行われるバラマキに警鐘をならす。著者の「地方はゆっくりと衰退するべし」という主張には賛同しかねるが、地方の現状認識および一時のブームに流されない目を養うという意味では一読の価値があります。

  • no.48
    2016/8/17UP

    フェザン店・長江 おすすめ!

    「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート コリン・ジョイス/生活人新書

    本書は、イギリスの高級紙「デイリー・テレグラフ」の記者・東京特派員として日本に住んでいる英国人記者による、『外国人から見た日本』的な本だ。この手の本は最近多くあるが、2006年に発売された本書はその先駆けと言える作品かもしれない。
    銭湯の素晴らしさやプールでの礼儀正しさ、電車で寝ているサラリーマン、「ずんぐりむっくり」という表現の素晴らしさ、「勝負パンツ」「上目遣い」「おニュー」という著者が好きな三大日本語、などなど、日本に長年住んでいる著者が、取材の過程ではなく、自身の日常生活の中で感じたことが素直に描かれているので面白い。日本語をしっかりと理解し、また新聞記者としての知性や観察眼などから切り取られる日本の姿は、普段日本人が意識しないようなものとして描かれていて、非常に新鮮だ。イギリスとの比較も随所で描かれていて、イギリスに対するイメージも変わるのではないかと思う。