さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.431
    2020/11/26UP

    本店・佐藤おすすめ!

    もみのき そのみを かざりなさい 五味太郎/アノニマ・スタジオ

    ――X’mas・冬に 心あたたまる絵本を――
    1981年に刊行された名作が、待望の復刊。見開き左側はくすんだ群青色、左側はポストカードサイズの色彩豊かな絵に詩的な言葉、という構成です。始めから終わりまで厳かな雰囲気に包まれます。

  • no.430
    2020/11/26UP

    本店・佐藤おすすめ!

    サンタクロースっているの? 絵・訳:いもとようこ 文:フランシス・P・チャーチ(ニューヨーク・サン社説)/金の星社

    ――X’mas・冬に 心あたたまる絵本を――
    8歳の女の子の「サンタクロースはいるのか?」という質問に、新聞記者が深い洞察で愛情たっぷりに答えた、ニューヨークの実話です。いもとさんのやさしい訳で、日本人の私たちの心に再び愛と思いやりの火が灯ります。

  • no.429
    2020/11/26UP

    本店・佐藤おすすめ!

    かげぼうし 安野光雅/冨山房

    ――X’mas・冬に 心あたたまる絵本を――
    テーマは光と影。繊細で美しい絵。見開き左側は、マッチ売りの少女がさまよう街、右側はかげぼうしたちが集まり過ごす世界、とそれぞれのストーリーが進みます。後半、2つの世界がひとつになる流れが、とても楽しいです。

  • no.428
    2020/11/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ゴースト 中島京子/朝日文庫

    魂は、何処へ。
    怖さも派手さも無い。読後、一人静かに想う、こちら側とあちら側。第五話「キャンプ」が好みだ。物語の輪郭が見えたところで終わり、余白で切実に胸に迫る。
    心にじんわり来る短編7つ。

  • no.427
    2020/11/5UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    女ともだち 早川義夫/筑摩書房

    亡くなった妻に捧ぐ鎮魂歌。著者の曲はほとんど知らないが、カバーされた『サルビアの花』には聴き覚えがある。
    音楽でも絵でも映画でも文学でも、無から何かを生み出す作家という人は凄いところで生きているのだと思う。自分をさらけ出し、飾らずに自分自身の中から溢れ出たものを表現する、格好つけないところにある格好良さ。どこからか借りてきたようなもので人は感動しない。著者はその繊細で真っ直ぐな感覚と共に、まさに身を削りながら創作活動をしているように感じた。そして本書を捧げる奥さんとの思い出には、当たり前と思っている今の日常でも、決して当たり前ではないという事に気付かされる。
    かけがえのないもの。本当の意味ではそれは無くなってからしか見えないものかもしれないけれど、少なくとも今をもっと大切にしたい。たまにこういう本を読むと痛切にそう思う。

  • no.426
    2020/10/17UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    悪の愉しみ 現代マンガ選集 山田英生/ちくま文庫

    映画には映画の、音楽には音楽の、小説には小説の、絵画には絵画の、それでしか表現できない世界があるように、マンガでしか味わえない世界がここにある。
    大人向けの、きたなくて美しい味わい深さ。
    『珈琲時間』より「Hate to See You Go」(豊田徹也)が収録されている。この短いマンガの、語られていない“間”が好きだ。

  • no.425
    2020/10/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    お腹召しませ 浅田次郎/中公文庫

    著者の時代小説は現代とのつながりを意識させるものが多い。決して今とは関係のない大昔の物語ではなく、ほんの2~3代前にはまだ記憶に新しい話なんだよというあたりのリアリティが、DNAに直接訴えかけるというか、胸を熱くさせる。
    本書も幕末から明治にかけてのお話6篇。ユーモアも交えながら落語のように読めて最後はほろりとさせられる、著者一流の歴史観と人情話だ。変化の激しい時代にあって、変えるものと変えてはならないものを改めて考えさせられる。著者の物語は、物事の価値観が揺らいでしまった時に本質に立ち返り、一本筋の通った時代小説で背筋を伸ばしてくれるような思いがする。ラストの「御鷹狩」は見事だ。

  • no.424
    2020/10/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    手塚治虫の山 手塚治虫/ヤマケイ文庫

    『火の鳥』のラストシーン。
    「文明をどんどん進歩させて、結局は自分で自分の首をしめてしまう。でも今度こそはと信じたい。今度の人類こそどこかでその間違いに気がついて、生命を正しく使ってくれるようになるだろう」と締めた。
    残念ながら現代でも、その間違った方向にどんどん進歩し続けている気がする。そもそも人間とはそういう意味で、ある種の愚かさを最初から組み込まれた生き物なのかもしれない。
    山をテーマにしたアンソロジーの本書は『火の鳥』に至る源流のようなものを感じさせる。超然とした自然に対する人間の愚かさや愛しさ。山や木や物さえも、人類と同等にひとつの命として捉えた時の自然観が人間の業を際立たせ、自然の厳しさと共に生命の尊厳を伝えている。
    日本のアニメ文化の奥深さ、その原点が著者なのだろう。

  • no.423
    2020/10/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子/河出文庫

    『南極料理人』『横道世之介』などの沖田修一監督で、11月6日より劇場公開される本書の映画が楽しみだ。
    人生は一度きりでやり直しがきかない。老いも別れも悲しみも、言葉では判ったような顔をしていても、実際の出来事による衝撃は全て誰もが初めての経験になる。タイトルの『おらおらでひとりいぐも』という言葉は、主人公が導き出すひとつの哲学というか悟りの境地に近い。喜びの中には深い悲しみが内包され、逆に深い悲しみの中にも喜びが内包されている。そのあたりの微妙な肌触りや気配のようなものを表現するのに、最もしっくりくるのが方言だったのだろう。
    本書に出てくる「食べらさるー」という方言も、なんとなく雰囲気は伝わっているだろうか。関係ないが「書かさる・書かさらない」という表現も単に「書ける・書けない」とは微妙にニュアンスが違う。岩手県周辺では方言と思っていない人も多いはずである。
    方言はさておき、年をとると独り言が多くなるのは、内なる何かと絶えず対峙し葛藤するものが増えるからかもしれない。それは見方によっては崇高な状態とも言える。

  • no.422
    2020/10/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    横道世之介 吉田修一/文春文庫

    大学入学後の、たった1年間だけを切り抜いた物語。そして所々に少しだけ挿入されるその後の人生が、チクリと胸に刺さる。
    自分とは全く関係ない物語のはずなのに、自分でも忘れている大切な何かを思い出させる。あの頃の事がなぜか次々と思い出され、なんだかとても切なく、いたたまれなくなる。懐かしくて切実。そんな小説だ。
    思い返してみると、若い時の中でその後を左右する重要な1年間というのは、確かにあるような気がする。ただし振り返ればというだけで、実際の当時はそんな事とは決して思ってはいない。それは本人も全く意識しないようなほんの些細な出来事だったりする。
    本書は当人も気づかない、なんてことのない、それでいて決定的な1年間その一瞬一瞬が見事に切り抜かれている。カッコいい事など何ひとつ起こらなくとも、紛れもない青春そのものが。
    本書原作の映画も傑作である。