さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.346
    2019/8/26UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    秋山善吉工務店 中山七里/光文社文庫

    いやあ、いい。なんて気持ちのいい小説だ。
    最近はあらゆるメディアで気持ちの悪いニュースを煽るようにこれでもかと見せつけてくる中で、この物語の主人公、大工の善吉はカッコ良すぎる。久しぶりに質のいい直球を見せられてハッとする気分である。誰でも自分の意見を好きなように主張できる、そういう時代だからこそ一周回って改めて光る小説なのかもしれない。ミステリーとしてのラストも見事だ。
    それにしても、まだどこかにいるのかなあ、こういう職人気質の頑固な爺さん。そりゃ身近にいたら現実には困る部分もあるだろうけど、何でもかんでも合理主義的な今の風潮にも疑問を感じる事はある。どんな時代であったとしても、その時の流行りや空気だけに流されずに、何の先入観もなく目の前の事実とまっすぐ向き合うことは大事だと思う。

  • no.345
    2019/8/20UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    カリ・モーラ トマス・ハリス/新潮文庫

    どんなものであれ、著者の新作を読まないという選択肢はない。名作『羊たちの沈黙』へのリスペクトを込めて。レクター博士シリーズは、その後の全てのサイコサスペンスを一変させたと言ってもいいだろう。レクター博士の存在を一層際立たせたのは、FBI捜査官の中で紅一点の、クラリスだった。
    今回の主人公は、何者にも頼らない孤高の移民女性、カリ・モーラ。ある種のトラウマを抱えた女性の強さと美しさを描くことに、やはり卓越したものを感じる。どうしても過去の作品と比べられてしまうのは、強烈な個性を生み出したビッグネームとしての宿命かもしれない。できることならそういった外野の評価とは一切関係なく、書き続けてほしいと願うばかりだ。
    ちなみにレクターシリーズ以外では『ブラック・サンデー』という作品も映画化されている。日本未公開だったこの作品も、かなりの傑作である。

  • no.344
    2019/8/13UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    影裏 沼田真佑/文藝春秋

    来年映画化される本書。文学性の強い作品は、受け取る側がどう読むかに全てが懸かっていると思う。これをどう映画で表現するのか今から楽しみだ。
    物語はごく短く、誰にでもわかるような文章で綴られている。普通に読めば多少の違和感と共にさらっと流れて、人によっては何も残らないかもしれない。しかし本書はこの違和感の意味を、じっくり時間をかけて読み解くべき作品であり、ある意味わかりづらいミステリーと言えなくもない。この物語の主題はタイトルの通り、言葉にされていない「影」や文章化されていない「裏」にこそあると思う。
    物語の終盤、主人公が日浅の父親に被災者の捜索願を出すように詰め寄る場面がある。父親は「では友情にお応えするとして」と、不意に席を立つ。ここで主人公は、“友情と、たしかにそう聞こえた。だがそれが誰と誰とのあいだの友情を指していうものか正確なことはわからなかった。”とある。話の流れとしては当然、主人公と日浅に決まっているのに全く予想もしていなかったような反応。友情ではないとするならば何なのか。そしてこの父親の、縁を切ったという息子に対する反応も、言葉とは裏腹な想いが濃厚に漂う。
    全く関係ないかもしれないが、デヴィッド・リンチ監督の映画『マルホランド・ドライブ』の不条理な美しさや難解さに近いものを感じる。

  • no.343
    2019/8/6UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    福袋 朝井まかて/講談社文庫

    江戸の乾いた風が吹き抜ける、8話の傑作短篇集。最初の「ぞっこん」だけで心をすっかり掴まれて、後はもう安心して名作古典落語を観ているかのようにラストの「ひってん」まで突き進む。いやあ、すっきりとしていて何とも言えず、いいなあと思う。
    この「いいなあ」という感じを言葉にしようとすると一気に野暮になってしまう。ただ、説明できないこの好ましい感覚が短い文章を読むだけで、一発で伝わるという事は現代の日本に於いてもなお、この「粋」がどこかに残っているという他ならぬ証拠だろうと思う。本書のような小説を読むことでいいなあと感じることができるのを、ちょっと誇らしげにも思う。

  • no.342
    2019/7/28UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    イノベーションのジレンマ クレイトン・M・クリステンセン/翔泳社

    ビジネス版「失敗の本質」。優良企業が破壊的イノベーションに直面した時、その会社を成長させてきたシステムや長所そのものが、失敗を招いてしまう可能性を示唆している。実績のある大企業が破壊的イノベーションに失敗しないためにはどうするべきか。見方を変えれば、実績のない小さな会社が上位企業のどこを狙えば進出できる可能性があるのかという事も、同時に示していると思う。
    かなり前に出版された本なので、紹介されている事例などは古いものの、言っている事自体は現在でも全く色あせていない。本書はサクセスストーリーや美談のようなものではない。ビジネスの本質を見抜く名著だと思う。

  • no.341
    2019/7/17UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    罪と罰 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー/新潮文庫

    例えば映画で言えば、『市民ケーン』や『東京物語』、『地獄の黙示録』或いは『ノーカントリー』などは、面白いかどうか以前に、絶対に避けて通ることのできない不朽の名作だと思う。本ならば、ノンフィクションではフランクルの「夜と霧」。ドストエフスキーなら本書か「カラマーゾフの兄弟」などは、一生に一度は読んでおくべき種類の名著だ。
    とはいえ、読書感想文課題図書みたいにあまり構えて読む必要はない。翻訳ものに付きまとう名前の呼び方に対する違和感など、細かい点はすっ飛ばしていいと思う。大まかなストーリーだけを追えれば十分だ。すぐに意味が判る事が重要なのではなく、まずは一度読んでおくという事が何よりも重要な点だと思う。時代の変化に関わらない普遍的な人間の本質を衝いているので、無意識にでも必ず心のどこかに永く残り、時間とともに人間的な厚さや深みを増していく。
    名作は後から効いてくる。

  • no.340
    2019/6/29UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    線は、僕を描く 砥上裕將/講談社

     ―もうこれ、2019年の上半期ベスト1です!―
    「水墨画」がテーマになった珍しいジャンルの小説。のめりこんでしまうストーリー展開も登場人物の心の動きもまるで絵が浮かぶような水墨画のシーンも何もかもが凄いです。今年の講談社メフィスト賞を受賞しました。新人にあるまじき筆力です。ほんと凄かったとしか言いようがないのです。

  • no.339
    2019/6/29UP

    ORIORI・佐々木おすすめ!

    ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい クリスティン・バーネット/角川文庫

    ―できることに目を向ける大切さ―
    重度の自閉症と診断された子供が9歳でノーベル賞級といわれる研究者になるまでの家族の物語。幾多の困難な状況下でも「できること」に焦点を当て子供に向かい合う母親の姿は、子育てだけではなく、学校や職場においても大切なことを教えてくれます。

  • no.338
    2019/6/29UP

    本店・佐藤おすすめ!

    海の生きもの つかまえたらどうする? 杉本幹・松橋利光・こばようこ/偕成社

    『生きもの つかまえたらどうする?』
    『海の生きもの つかまえたらどうする?』
    ―自然とふれあう夏休みに大活躍の2冊―
    自然の中で遊ぶ機会が多い夏休み。庭・公園・田んぼ・畑・川の周辺。そして海。たくさんの小さな生き物に出会えます。つかまえたい!つれて帰りたい!でも飼い方は?飼えなくなったらどうする?…など、この本を読むと、そんなポイントがひと目でわかりますよ!

  • no.337
    2019/6/29UP

    松園店・山崎おすすめ!

    「秋田のターシャ」と呼ばれて 佐々木利子/主婦と生活社

    ―秋田で活躍するスローライフに注目―
    標高2236メートルの名峰鳥海山が目の前にそびえ立つ風光明媚な土地秋田県にかほ市。山のふもとの小さな部落にガーデンカフェを経営されている佐々木さん。美しいイングリッシュガーデンの1年間の風景とこの土地で育てた恵みで作られた料理などを紹介。