さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.392
    2020/4/2UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    雲を紡ぐ 伊吹有喜/文藝春秋

    ――盛岡が舞台の小説の新定番――
    家出をした高二の美緒は盛岡で毛織物の工房を営む祖父の家に駆けこむ。そこで出会ったホームスパンが家族の絆を紡いでいく。手づくりの技の醍醐味を堪能しながら、娘と母・父・祖父のほつれた糸を紡ぎなおすドラマに嗚咽を耐えられない。盛岡の名所がこれでもかというくらいに登場するのも嬉しい。

  • no.391
    2020/4/2UP

    本店・佐藤おすすめ!

    ちきゅうはメリーゴーラウンド まど・みちお:詩/南塚直子:絵/小峰書店

    ――どんな世の中であったとしても――
    まど・みちおさんの、目の前の全てを慈しむような詩が、南塚直子さんの描く春色のようなあたたかい世界で広がります。「いちねんせいになったら」「ぞうさん」など童謡で親しまれている詩も入っています。
    世の中がどんな状況でも、子どもの無垢なまなざしは守りたい。そんな気持ちになります。

  • no.390
    2020/4/2UP

    本店・大池おすすめ!

    向田邦子ベスト・エッセイ 向田邦子編/筑摩文庫

    ――向田邦子は終わらない――
    好評の筑摩文庫ベストエッセイシリーズ。9冊目で女性読者に人気の向田邦子さん登場。
    家族・食・仕事の事などをエッセイのお手本というべき文章で書いています。中野にライオンがいた話や10時間かけて作ったソースを捨てられた話は大笑い。
    学生には「手袋をさがす」「黄色い服」を読んでほしい。自分がこのままでいいのか、これからどう生きていけばいいのか迷ったときに、心の支えになる名エッセイです。

  • no.389
    2020/4/2UP

    松園店・山崎おすすめ!

    標準語に訳しきれない方言 日本民俗学研究会編/彩図社

    ――標準語で訳せない150の方言集――
    「うるかす」「あめる」「たごまる」これ全て方言です。もしうっかり東京で使ってしまうと、???になりかねません。かと言って標準語に訳する言葉が即座に出てきません。さてあなたは「びっこたんこに履いた靴でかっぽりした」これを標準語に訳せますか?

  • no.388
    2020/4/2UP

    外商部・栗澤おすすめ!

    遊川夕妃の実験手記
    彼女が孔雀の箱に落ちたわけ 綿世景/星海社

    ――盛岡市出身の新進気鋭作家、衝撃のデビュー作!――
    助手の和を引き連れて、臨時講師として母校に出向く自称・発明家の遊川夕妃。
    しかし校内では、反目しあっていた教師と生徒のふたりとも失踪する事件が起こっており・・・。
    星海社FICTIONS新人賞を受賞した読後にほろ苦さが残る学園ミステリーの傑作で、シリーズ化が予定されています。
    著者は盛岡市出身ですので、ぜひ応援しましょう!

  • no.387
    2020/3/29UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    不道徳な経済学 ウォルター・ブロック/ハヤカワ文庫NF

    本書の内容をすべて正しいと言うつもりはない。ただ、誰しもが一読の価値はあるように思う。ポン引き・売春婦・ヤクの売人・ダフ屋・悪徳警察官など、社会的に不道徳と蔑まれる面々を、経済という側面から全体を俯瞰して見ている。敵の敵が見方であったり、巨悪を抑えるための必要悪があったりと複雑怪奇な世の中で、単純に不道徳だけを規制することが結果として役に立っているのかどうか。
    ひとつだけ言える確かな事は、反対意見にも耳を貸すということ自体、自分の中だけの「正論」や「正義」を振りかざす人よりも、主張に厚みや深さが増すという事だ。いろいろな立場や利害関係、その功罪などを熟考した上でそれでもなお自分はこう思うという、最後の最後に残る道徳だけが本物だろう。
    訳者あとがきにも書いてあるが、映画『セルピコ』の話が印象深い。そう言えば『セブン』のブラッド・ピットのセリフの中にもセルピコが出てくる。いかにもだ。

  • no.386
    2020/3/23UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ル・ジタン 斎藤純/双葉文庫

    音楽や写真、絵画、文学、映画なども含めあらゆる芸術は、作り手側である人間の、内面の発露だからこそ人は共感し感動する。そんな事を改めて思った。
    大きく心を動かされるのは単に物理的な完成度の高さではなく、才能と共にその人の個性や想いをも感じ取ることができるからだ。喜びや悲しみをまとう人間の感情と場の空気感。そのあたりの雰囲気はどんなにAIが進化しようとも、簡単には作り出せるものではないだろう。
    本当に大切なものは、生み出された傑作にあるのではなく、それを生み出す土壌や人間の心の方にあるのだと思う。
    1997年に刊行された同名文庫の新装版。時が経っても変わらない雰囲気の伝わる小説である。

  • no.385
    2020/3/19UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    いまひとたびの 志水辰夫/新潮文庫

    心の奥に深く刺さる、沈黙。低く、響き続ける静寂の余韻。
    短編一つひとつの終わりに訪れる、言葉にならずに消え入る吐息のような、取り残された想いのような、圧巻の空白が全てを雄弁に物語る。
    ジャンルを問わず著者にしか出せない空気が、間違いなくそこにある。いつ読んでも何度読んでも、ああこれだと思う。深いため息と共に只々茫然として、見事と言う他はない。
    この感覚はもう、志水辰夫というひとつのジャンルなのだ。

  • no.384
    2020/3/14UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    敵の名は、宮本武蔵 木下昌輝/角川文庫

    時代小説は歴史的な事実と共に、ある意味現代小説よりも高い想像力やオリジナリティが求められるジャンルだと思う。同じ題材であっても見方によっては悲劇にも喜劇にも、悪人にもヒーローにもなりうる。専門家がどう言おうと実際本当のところは誰にもわからず、想像するしかないのだから。
    誰もが知る剣豪、宮本武蔵。その生き様を敵の目から見た光の当て方で、見事なエンターテイメントに仕上げている。剣による命のやりとりももちろん出てくるが、美術的な視点が印象深く心に残る。ともかく『枯木鳴鵙図』(こぼくめいげきず)などの水墨画をいま一度しみじみと眺めてみたい、そんな気にさせられる小説である。

  • no.383
    2020/3/7UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    そばと私 季刊「新そば」編/文春文庫

    年齢的には充分にいい大人なのだが、幼い頃になんとなく感じた大人の印象には程遠い気がする。例えばそれは酒の飲み方。酒に飲まれるタイプはいつの時代でもしょうがないが、酒を格好良く飲める大人は特別何もしなくても様子がいい。
    そば屋での酒がその最たるものだろう。やれ高級店に行くの寿司屋に行くのバーに行くのではなく、ごくありふれたそば屋なんかで粋に呑める大人には別の憧れを感じる。変にうんちくを語るでもなく、有名店に並んだりもしない。簡単なつまみでさりげなく、そして美味そうに酒を呑み、あまりだらだらせずにそばを啜ってぱっと席を立つ。そんな理想的な格好のいい大人は、もはや幻想なのかもしれない。
    本書には古き良き大人のエッセイ67人分のこだわりが詰まっている。空気感や匂いまでもが充分に伝わり、異常にそばが食べたくなる。ああ、平日の昼下がり、天ぷらかなんかで酒をやりつつ、冷たいそばで締めたいなあ。所詮あまり格好良くはできないけれども。
    本店入ってすぐの左隅、酒と食のコーナーは店長の趣味でもあると思われる。