さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.320
    2019/4/4UP

    本店・大池おすすめ!

    珈琲が呼ぶ 片岡義男/光文社

    喫茶店はスマホより本が似合う

    喫茶店で珈琲を飲みボーっとしている時間が好きだ。少し時間がたつと本を読みたくなる。小説よりエッセイが合っている。おすすめは片山義男さん。
    この本は珈琲・音楽・映画の素敵な話が満載です。この本片手に喫茶店で贅沢な時間を過してください。

  • no.319
    2019/4/4UP

    外商部・栗澤おすすめ!

    あわいゆくころ 瀬尾夏美/晶文社

    何度でも読み返して下さい

    アーティストである著者が、震災後に書きとめていたツイートやエッセイをまとめた本書。日記文学という手法で、被災地のありのままの様子を伝えています。
    震災から年月を重ね、書店の店頭から関連本が減りつつある今日。
    手元に置き、折に触れて読み返したくなる一冊です。

  • no.318
    2019/4/4UP

    松園店・山崎おすすめ!

    おとなの週刊現代 2019 vol.1 週刊現代別冊/講談社

    シニアが気になるあれこれが満載

    週刊現代から特に好評だった中高年向け記事の総集編。
    自身や家族を失った時に慌てないため今やっておくことや、遺産相続、年金、保険などの知識や後悔しない対処方法などの他、認知症について、名医が教える手術や薬が本当に必要なものなのかなどが1冊に。

  • no.317
    2019/4/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫

    『裏切りのサーカス』という映画がある。
    一度観てよくわからず、二度観てもまだよくわからなかったが、その作り込んだに違いない重厚な雰囲気にただならぬものを感じ、さらに名作として名高い原作の本書を読んでみた。
    この解らなさは細部にある。つまり話の筋は大体解るが、底が見えない緻密さと奥深さがあり、そこが魅力のひとつでもある。そもそもわかりやすいスパイなど、その職務上本質的にありえない。東西冷戦時の英国諜報部〈サーカス〉を舞台に繰り広げられるプロ同士の情報戦。あらゆるプロフェッショナルとは、実は派手なものとは対極にある、地味な仕事一つひとつの確かさにあるのではないだろうか。
    映画を観て、本を読み終えてもなお、また始めから読み返してみたくなる。そしていつ読んでもまた、新たな発見がある。優れた文学作品とはそういうものなのだろう。
    魂は細部に宿っている。

  • no.316
    2019/3/21UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    新版 ダメな議論 飯田泰之/ちくま文庫

    10年、あるいは20年というスパンで考えると、実際のところ本当はどうだったのかを示す各種データが出揃い、事実がようやく明らかになるということがある。その意味では平成も終えようとしている今、出版されてから12年後の文庫化というのは過去を冷静に振り返り分析することのできる、いい期間なのかもしれない。
    本書に載っている「ダメな議論」の例文が非常にもっともらしく、今でも何気なく読む分には思わず納得してしまいそうなものが多い。現在では明確に事実誤認とされるものであったとしても、作文しだいでは妙な信憑性が生まれてくるから不思議である。なんとなく「ダメな議論」に押し流されてしまわないように、本書では5つのチェックポイントを設定し解説している。
    文庫化にあたり、「ネット時代のダメな議論」を加筆。ネットでは自分にとっての心地いい議論だけがどんどん集まってくるので、偏りのある一部の常識だけが先鋭化してしまう傾向があるという。たまには外の空気を吸いに街の本屋へ足を運び、ざっと全体を眺めながら興味の範囲外にも触れてみる事が、軽い足の運動とともに頭をニュートラルに切り替える最善の方法だと思うが、どうか。

  • no.315
    2019/3/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    女たちよ! 伊丹十三/新潮文庫

    あらゆるものの「本物」「正統」を語る1968年発行の本書。それが嫌味にならずに読めるのは「本物」を語りながら、その知識だけでなく人間の「本質」をも語っているからだと思う。なるほど、こんな面白いエッセイを書く人の映画が面白くないはずがない。『マルサの女』は文句なく面白いし、著者らしさが一番色濃く出ているのは『タンポポ』だろう。
    先日、現在88歳のクリント・イーストウッドが監督・主演の映画『運び屋』を観に行った。過去の作品に比べると地味ながら、あらゆる無駄を削ぎ落としたような監督自身の集大成とも言える見事な作品であった。
    伊丹十三が亡くなったのは1997年。もう20年以上も前になる。生きていれば今年86歳だったはずの著者が、もし今映画を撮るなら現代をどう切りとるのか。あるいは自分自身をどう表現するだろう。著者の作品をもっと観てみたかった。
    ちなみに本書は女性に向けた本ではないものの、男女を問わず面白いはずであり、そう願いたいという事は申し添えておく。

  • no.314
    2019/3/8UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    進化の法則は北極のサメが知っていた 渡辺佑基/河出新書

    ニシオンデンザメの寿命は推定400年という。この長さは本文中の表現を引用すると、下記の通り。
    「――徳川将軍の時代が15代続いてついに終焉を迎え、幕末の動乱を経て明治政府が形成され、いくたびかのひどい戦争を経て日本国憲法が公布され、その後も数えきれない政治的動乱や自然災害や凶悪事件が起こり、そしてインターネットとコンビニエンスストアに囲まれた現代の生活が形成された。――」
    それと同じ長さである。
    「生物はなぜ多様か」という大いなる問いに対して、ニシオンデンザメとアデリーペンギンとホホジロザメを比較しながら全ての生物に共通するメカニズムを物理的に解く本書。フィールドワークに向かう旅の紀行文としても面白い。
    あと、本筋とは全く関係ない部分のカッコ書きで小さく、伊丹十三のエッセイが面白いという旨の記述があったので、次読んでみようと思う。

  • no.313
    2019/3/4UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ノースライト 横山秀夫/新潮社

    久しぶりに著者の本を読む。いつもの警察小説ではないが、静謐でありながら力強い、頁をめくるごとにそれは紛れもなく、流石の横山秀夫小説だった。
    建築士のストーリーで、ル・コルビジュエやブルーノ・タウトの名前が出てくる。その芸術性や思想性に触れながらミステリーは展開していく。デザインとは何か。仕事とは、家とは、生きるとは何なのか。そして最後の瞬間に遺すべき最も大切な物は何か。大事件が起きるわけでもなく、さりげないストーリーの中に引き込まれ、やがて静かに重厚なテーマが浮かび上がる。種類は違えど、あの傑作『半落ち』を彷彿とさせる著者の真骨頂と言える。
    個人的にはまず、表紙の美しさに目を奪われた。そしてタイトルと著者名で間違いないと確信する。本の装丁はある程度その内容を表している。気に入った表紙は神経のどこかに刺さったという意味で、買っておいて損はない。今の時代、本は贅沢品だとは思う。でも、たまにはそんな贅沢な買物をしてもいいのではないだろうか。気に入った装丁だけの本棚があればきっと楽しく、より豊かな時間を味わえる。最近買ったすべての物の中で、本当に意味のあるものはいくつ得られただろう。

  • no.312
    2019/2/11UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    歴史という教養 片山杜秀/河出新書

    人間誰でも一回限りの不可逆性の中で今を生きている。歴史も二度と繰り返す事のない唯一の出来事であり、歴史から直接現在に学べることはそう多くはないのかもしれない。しかし、自分自身が過去の実体験から学び未来を考える事は、最小単位での歴史から学んでいる事に他ならない。その範囲を人類の遠い過去にまで広げ、その経緯や経験に思いを馳せる事は、今だけを考える人よりも過去‐現在‐未来に対する認識の幅や奥行きが加わり、思考への厚みや深さを増す。それを教養と呼ぶのだろう。と、およそ教養のない自分にさえ、歴史への興味を抱かせる本である。
    本書を読んで、学生時代まともに歴史を学ばなかったことに後悔を感じている自分自身もまた、今歴史から痛烈に学ばされているという事なのだろう。何がいつ降りてくるかは誰にも判らない。ただ、降りてきた時がいつであれ、その時がいつもベストタイミングである。

  • no.311
    2019/2/5UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    桶川ストーカー殺人事件 遺言 清水潔/新潮文庫

    2016年に僕は「殺人犯はそこにいる」という作品を読んで、「文庫X」という企画を行った。清水潔の作品を読むのは、「殺人犯はそこにいる」が初めてだった。もし「桶川ストーカー殺人事件 遺言」を先に読んでいたら、こちらを「文庫X」として売り出していたかもしれない。そう感じるほど、こちらも全国民に読んでほしい作品だった。
    この事件をきっかけにして、「ストーカー規制法」が制定された。つまりこの事件までは、ストーカーという存在に対して警察が出来ることは何もなかった。それは確かに事実ではある。民事不介入を原則とする警察が、犯罪行為と認定しにくい行為をしているストーカーに手出しが出来ないのは、分からないでもない。
    しかし、本書を読めば、被害者である詩織さんの対応をした警察がただ怠慢だったということが分かるだろう。
    『詩織は小松と警察に殺されたんです』
    僕ら市民は、警察という暴力装置が、正しくその暴力を行使してくれることを願うしかない。罪を犯した人間を捉え、罰を与え、罪を犯していない人間の安全と平和を守る。そのために警察には強大な権力が与えられているはずだ。しかし本書では、その権力が、警察の体面を守るために罪のない個人を貶める目的で使われたことがはっきりと記されている。
    僕らは、こんな世の中に生きているのだ。