さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.61
    2016/9/6UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    藝人春秋 水道橋博士/文春文庫

    テレビで見る人たちのことを、僕らは、基本的にはテレビを通じてしか知ることは出来ない。ライブに行ったり、何らかの創作物に触れるなど、テレビ以外の場でも知ることは出来るが、いずれにせよ、僕らが彼らの「実像」を知ることが出来る機会は少ない。
    本書は、自らもお笑い芸人として芸能界に身を置き、身近で彼らを見ている者として、様々な芸能人の「実像」に可能な限り迫ろうとする作品だ。本書からは著者の、「この人達の、テレビだけでは捉えきれない姿を自分が活写せねば」という思いを感じることが出来る。自らが光源となって彼らを照らし、そこに出来る影までも絶妙に掬い取りながら、著者は芸能人の一面を描写していく。
    そのまんま東(東国原英夫)・甲本ヒロト・古舘伊知郎・テリー伊藤・北野武・松本人志・稲川淳二など、多彩な顔ぶれが揃う。著者の鋭い観察眼と、類まれな言語感覚が、彼らの新たな側面を引き出すのだ。

  • no.60
    2016/8/30UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    家康、江戸を建てる 門井慶喜/祥伝社

    ブラタモリのように古地図を片手に、地形から江戸の痕跡を辿ってみたくなるリアル歴史時代小説だ。家康から始まった江戸が、現在の世界屈指の巨大都市東京まで繋がっているという感じがするのがなんとなくうれしい。家康や時代小説にあまり興味がないという人でも、広大な湿地帯だった平野をどうやって都市化していったのかというのが主題なので、誰が読んでも面白く読めると思う。形に残っているものだけでなく、職人の「技」とか「粋」という下町特有の感覚なども、もしかしたら江戸建設時に日本中から集まった腕利きの職人たちによる美学の結晶が、現代人の遺伝子にもどこかに響いているのかもしれない。

  • no.59
    2016/8/30UP

    フェザン店・松本おすすめ!

    ざんねんないきもの事典 下間文恵、他/高橋書店

    全国(ぜんこく)200万人(まんにん)の「ざんねんないきもの」ファンの小学生(しょうがくせい)のみんな、こーんにーちはー!
    この前(まえ)は、スズムシは前足(まえあし)にあるむき出(だ)しの「こまく」で音(おと)を聞(き)いているんだよって教(おし)えたよね。そう、うるさくって地団駄(じたんだ)もふめないねって言(い)ったら、みんなが「ジダンダってなーにー?」って聞(き)くから、先生(せんせい)が見本(みほん)としてふんで見(み)せました。そうしたらタケシくんが、「うちのお父さん弁護士(べんごし)だからいつもジダンだよ」ってウケをねらってスベったんだよね。
    さて、今日(きょう)はコアラさんのざんねんな知識(ちしき)を勉強(べんきょう)します。コアラさんは一日のほとんどを寝(ね)てすごします。こらこら、お父(とう)さんみたいって言(い)っちゃダメだぞー!実(じつ)はお父……コアラさんがほとんど寝ている理由(りゆう)は、食(た)べものにあります。みんな知(し)っているかな?「ユーカリッ!」そう、先生(せんせい)がいつも行(い)っているスナックと似(に)た名前(なまえ)の葉(は)っぱだよね。そのユーカリの葉(は)っぱ、実(じつ)は猛毒(もうどく)が含(ふく)まれています。こわいねー。その毒(どく)を抜(ぬ)くために、コアラさんは一日中寝(ね)ているというわけ。こらこらタニさん、お父さんで試(ため)すとか大(おお)きな声(こえ)で言っちゃダメだからね。試(ため)さなくても寝(ね)てるんだから。でも、そんなコアラマインドが先生(せんせい)はとても好(す)きです。毒(どく)を食(く)らわば皿(さら)まで、据(す)え膳(ぜん)食(く)わぬは男(おとこ)の恥(はじ)で先生(せんせい)は…先生(せんせい)は行(い)くとこまでいっちゃいました。はい、ユカリにゆすられています。秘密(ひみつ)だよー、みんな。えっ何(なに)、アツシくん?先生(せんせい)がいちばん残念(ざんねん)だって?アハハ、先生(せんせい)「こまく」が足(あし)にあるから良(よ)く聞(き)こえません。えっ?オチさん何(なん)って言(い)った?先生(せんせい)がスズしい顔(がお)でムシを決(き)めこんでいる?
    おあとがよろしいようで。

    上記のようなやり取りはありませんが、大人も楽しめるとても楽しいいきもの事典です。

  • no.58
    2016/8/30UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    臨3311に乗れ 城山三郎/集英社文庫

    本書は、「近畿日本ツーリスト」の前身である「日本ツーリスト」の創業から、創業者である馬場の死までを描き出した一冊だ。城山三郎が馬場から依頼されて書いた社史である。
    この会社、ちょっと凄すぎる。読めば読むほど、よくもまあ会社として成立していたな、と感じる。いや、正直に言えば全然成立していなかったのだが、「情熱」と「圧倒的な努力」で覆い隠していたのだ。
    「日本のトーマス・クック社を目指そう。」
    創業メンバーは、そういう強い想いを共有していた。そして、旅行業界の常識に囚われない、信じられないようなアイデアややり方を持ち込み、日本に、彼らが理想とする「旅行」の形を創り上げていった。
    面接を受けて会社に入る。そういう「就職」とはまるで違う形で集まった面々。野武士のような、普通の社会にはうまく馴染めなかったはみ出し者たちだからこそやれた破天荒な「会社づくり」を、是非体感して欲しい

  • no.57
    2016/8/30UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ルポ資源大陸アフリカ 白戸圭一/朝日文庫

    本書は2004年から2008年の4年間、毎日新聞の南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ特派員として、サハラ砂漠以南48カ国をたった一人で担当した著者によるノンフィクションだ。「暴力が結ぶ貧困と繁栄」をテーマに、アフリカに強く関心を持つことのない日本人にアフリカへの関心を持ってもらおうという想いで描かれている。
    アパルトヘイト後格差が広がり続けた南アフリカ。石油産業によって国内がズタズタにされているナイジェリア。鉱物資源の存在があることで「世界の火薬庫」へと突き進んでいったコンゴ。著者はこういった、日本国内では強い関心を抱かれにくいテーマに、かなり危険な取材を敢行して切り込んでいく。
    これらの問題は、先進国に生きる僕らとは無関係ではない。先進国の生活は、アフリカなど発展途上国の生活を犠牲にして成り立っている。僕らの生活が、日本から遠く離れたアフリカでどんな現実を引き起こしているのか。僕らはそれを知るべきではないだろうか。

  • no.56
    2016/8/30UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ヤノマミ 国分拓/新潮文庫

    ヤノマミ族とは、現在もアマゾンの奥地で原初の生活を続けている少数民族だ。1万年以上も、同じ生活を営々と続けてきた。本書は、NHKのディレクターとしてヤノマミ族の集落に計150日に渡って同居し続けた著者が描くノンフィクションだ。
    著者が同居することになったワトキリという集落が文明社会と初めて接触したのは1970年代になってのことだ。彼らは、文明社会との接触が少数民族を駆逐していった歴史を知っている。それでも彼らは、著者らを集落に受け入れた。
    様々な儀式や伝統が、彼らの生活を合理的に成立させるために最適化されている。それは、僕らの常識からすれば信じられないものばかりに映る。文明社会の論理からはみ出す様々な価値観が、人間として生きること、人間として死ぬことについて、様々な示唆を与えてくれる。

  • no.55
    2016/8/30UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    許されようとは思いません 芹沢央/新潮社

    あたたかい短篇をお望みの方にはおすすめできません。読後は決してよくありませんし、ある意味でどの短篇も怖さを感じずにはいられません。どんでん返しの結末さえも、日常に潜んでいる、現実にありえないとは言い切れないのが怖いのです。次の作品ではどんな風に「人間」を書いてくれるのか、次作が気になります。

  • no.54
    2016/8/30UP

    フェザン店・佐々木おすすめ!

    リボルバー・リリー 長浦京/講談社

    海外冒険アクション小説が好きな方にも、きっと満足して頂ける本格ハードボイルド小説登場です!しかも主人公は女性。16歳から諜報員として訓練され「最も排除すべき日本人」とまで呼ばれたリボルバー・リリーが家族を殺害された少年と共に、帝国陸軍1000人を相手に挑んだ六日間。どんな激しい闘いであろうと、新しい洋服に身を包みハイヒールを脱がないリボルバー・リリー圧巻です。女が強くて何が悪い?

  • no.53
    2016/8/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ピンポンさん 城島充/角川文庫

    ノーベル平和賞をもらってもおかしくない、と言われた日本人卓球選手がいたことを、あなたはご存知だろうか。荻村伊智朗、その人である。
    新聞に、20世紀を代表するスポーツ選手というアンケートが載った時、荻村は16位の中田英寿を抑えて15位にランクインした。文化大革命によって世界から孤立した中国を国際舞台に引き戻したのも荻村であり、当時の中国の指導者である周恩来からも絶大な信頼を得ていた。卓球王国・中国を生み出したのも、荻村なのだ。
    高校一年生の時に卓球を始め、たった5年7ヶ月で世界一となった圧倒的な練習量。選手としては毀誉褒貶がある独特のスタイル。常に卓球界、スポーツ界全体を考えて行動し続けた器の大きさ。あまりにも偉大なスポーツ選手だ。
    1994年、荻村が62歳で亡くなった際、メディアは荻村についてこんな風に伝えた。
    <日本スポーツ界は天才的才能のリーダーを失った><戦後日本の希望の星><「スポーツを通じ平和」が信念>
    この凄い男の人生を、是非あなたにも知ってほしい。

  • no.52
    2016/8/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    僕たちはいつまで
    こんな働き方を
    続けるのか? 木暮太一/星海社新書

    マルクスの「資本論」と言われると、難しそう、つまらなそう、と感じる人が多いだろう。僕もそうだ。しかし著者は、この「資本論」の中の考え方こそが、サラリーマンとして生きていく上で最も重要なのだ、と語る。本書は、「資本論」をベースに、「給料はどのように決まるのか?」「会社の利益はどのように生み出されるのか?」などを明らかにし、それらを元に、「我々はどんな働き方を目指すべきか」という提案をしてくれる作品だ。「資本論」をベースにしているとはいえ、難しい話はまったくない。既に社会に出ている人にももちろん読んでもらいたいが、中学生・高校生・大学生など、まさにこれから社会に出て行く人が、自分の将来の生き方を考える上で知ってもらいたい一冊だ。