さわや書店 おすすめ本
本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。
-
no.892016/11/8UP
本店・総務部Aおすすめ!
紙の城 本城雅人/講談社
新聞社の話だが本屋や出版業界も同じ“紙の城”という事で、主観も交えながら後半は夢中で一気に読んでしまった。テレビ局と新聞社を相手にIT企業が買収劇を仕掛ける物語。「紙」対「ネット」はわかりやすい構図だが、新旧あらゆる価値観の相違はどんな企業、どんな商売でもあると思う。時代の変化に対応し道具や媒体は変わっても、売っているものの本質は正しく見極めなければならない。パッケージやシステムだけがどんなに素晴らしくても中身が伴わなければ長くは続かない。やっぱり最終的には人だよという話はこれまでもいろいろな所で聞いてきた。しかし、これからもそうあり続けると言い切れるのか。それでも、これからも人の力を信じ続けたい、そう思わせる物語だった。
-
no.882016/11/8UP
フェザン店・長江おすすめ!
理系の子
高校生科学オリンピックの青春 ジュディ・ダットン/文春文庫『何年ものあいだ、科学者の頭をなやませていた問題を高校生が解決しているのです』
アメリカには「サイエンス・フェア」と呼ばれる、主に高校生を対象にした科学コンテストがあり、その中でもトップクラスに優秀な研究が、「「インテル国債学生科学フェア(通称インテルISEF)」に登場する。賞金総額400万ドル(日本円で3億円以上)という破格のコンテストだ。
本書には、凄い素材を開発し特許を五つ取得、年間で1200万ドルの売上を見込める会社を設立した高校生や、14歳にして核融合炉を作ってしまった少年、巨大企業デュポン社に挑戦しFBIから監視されるようになった少女など、ちょっと考えられないような少年少女が登場する。
難しい科学の本ではない。科学的な話はほぼ出てこないと言っていい。本書は、少年少女たちの生い立ちや、何故研究を始めようと思ったのか、研究に関わる苦労や挫折など、『人』が描かれる作品だ。臆することなく読んで欲しい。 -
no.872016/11/8UP
フェザン店・長江おすすめ!
SFを実現する
3Dプリンタの想像力 田中浩也/講談社新書3Dプリンタがメディアで報じられ始めた時、それは「今すぐ」未来を変えるかのような夢の技術として紹介された。著者はそんな状況を危惧して本書を執筆する。
『現在、日本でのこの分野は、一方は実態のない、風評ベースの過剰な期待、もう一方は現状の3Dプリンタの実力に対する冷静な失望、という二極に大きく引き裂かれてしまっています。』
本書では、現在のまだまだ未成熟な技術状態から可能な限り想像を巡らせ、「ものをつくる」上で3Dプリンタがどのようにして人間の思考や創作や感覚を変えうるかということについて論じている。ここで書かれていることは、技術の進歩ともに古びていってしまうかもしれないが、それよりも新たなビジョンやアティチュードを示したい。著者はそんな思いを本書に込める。
携帯電話やインターネットが世界を激変させたのと同じだけの可能性を、3Dプリンタは持っているかもしれない。そんな希望を感じさせてくれる作品だ。 -
no.862016/11/1UP
フェザン店・長江おすすめ!
赤めだか 立川談春/扶桑社文庫
立川談志という、50年に一人出るか出ないかと言われる落語の天才の弟子である談春が、弟子入りから真打ちになるまでの立川一家での修行時代を書いた作品だ。談春役を二宮和也が演じたことでも記憶に新しいだろう。
立川談志は、硬直した落語協会を飛び出し、自ら「立川流」を創設する。どうやったら昇進出来るのか分からない落語協会の仕組みと違って、立川流はシンプルだ。
「古典落語を50席覚えること」
これが出来れば二ツ目に上がれる。そりゃあ弟子は必死で覚える。
さて、立川流は、落語協会を飛び出しちゃったもんだから、寄席がない。落語家は寄席の手伝いをすることが修行みたいなもんで、前座は普通死ぬほど忙しいが、立川流の弟子はやることがない。談志の世話はしなくちゃならないが、それ以外は自分で何をすべきか考える。それが立川流。
そんな立川流が生んだ天才の一人の、落語になるまでの道を描いたエッセイだ。 -
no.852016/11/1UP
フェザン店・長江おすすめ!
イカロスレポート 竹田真太郎/講談社
新宿区の大学に通う、化学科の学生・坂崎基樹は、大学に入ってから「サイクリング同好会」に入り、そこでロードバイクに魅せられた。それは、恋愛とは無縁の生活だった。
そんなある日のこと、高校時代の悪友・萩山から久々に連絡があった。彼は坂崎に、「人力飛行機を漕がないか?」と持ちかけるのだ。「航空機研究会」に所属する萩山は、いわゆる「鳥人間コンテスト」への出場のためのパイロットを探していたのだ。様々な事情から予定していたパイロットがダメになり、ロードバイクで鍛えた実績を見込まれてのスカウトだった。
正直そこまで乗り気なわけではなかった坂崎だったが、とある事情から一変、全力で鳥人間コンテストのパイロットを目指すことになる…。
青春小説の王道的展開でありながら、「鳥人間コンテスト」という一風変わったテーマがこの作品を普通の物語にはしない。甘酸っぱさとカッコよさが詰まった一冊だ。 -
no.842016/11/1UP
本店・総務部Aおすすめ!
人生はいつもちぐはぐ 鷲田清一/角川ソフィア文庫
ぐずぐずと思い悩み迷いまくりながらも、人は今を生きるために迷いを断ち切り、最後に残る何かを選択している。その決断の本気度は、言葉だけでなく全体の雰囲気として、思い悩んだ厚みの分だけ正確に周囲に伝わり、きっと未来の誰かに繋がっていく。職人の矜持であれば、その仕事が未来の同業者に対して恥ずかしい仕事はできないというように。今の私達は恥ずかしくない仕事をしていると言えるのかどうか。悩みは尽きる事がないが、ぐずぐずと考えている事にも一定の肯定を示してくれる本書は、私のようなぐずぐず人間にはありがたい。正直、よくわかる話とよくわからない話が半々ぐらいだったが、大事なことが書かれている本だと思う。
-
no.832016/10/26UP
フェザン店・長江おすすめ!
謎の独立国家
ソマリランド
そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア 高野秀行/本の雑誌社アフリカ東北部のソマリア共和国は、「崩壊国家」と呼ばれている。内戦により無政府状態が続き、国内は無数の武装勢力に埋め尽くされ戦国時代の様相を呈しているという。しかしその一角に、「ソマリランド」という奇跡のような地域がある。無政府状態の中で平和な独立国家を長年保っているだけでも凄いのだが、独自に内戦を終結させ、複数政党制による民主化に移行し、普通選挙により大統領選挙を行った民主主義国家だというのだ。
ホントにそんな場所があるのだろうか?
誰もやったことがないことに惹かれる著者は、ほとんどその存在が知られていない「ソマリランド」に乗り込むことに決める。
そこで高野秀行は、ソマリア文化を決定づける「氏族」という概念を、恐らく世界中の誰よりも完璧に理解し、その上でソマリアの謎に迫っていく。高野秀行らしさが爆発しながら、学術的にも相当価値が高いだろうと思われる、驚異のノンフィクションである。 -
no.822016/10/26UP
フェザン店・長江おすすめ!
理性の限界
不可能性・不確定性・不完全性 高橋昌一郎/講談社現代新書本書は、『理性』というキーワードで、政治・経済・数学・物理・哲学・宗教などありとあらゆる分野について書かれた作品だ。メインで描かれるのが、「アロウの不可能性定理」「ハイゼンベルグの不確定性定理」「ゲーデルの不完全性定理」の三つで、これだけ聞くと、それだけで拒絶したくなる、という人もいるだろう。
しかし本書は、一風変わった形式が取られた作品だ。それが本書を、圧倒的に読みやすくしている。
本書は、『論理学者』『科学主義者』『数理経済学者』『会社員』『学生A』と言ったような様々な人々が集う架空のシンポジウムという設定で、会話だけで構成されている。専門的な話も会話なら読みやすく、また『会社員』や『学生A』といった素人が素朴な疑問を出してくれるので、難しい話のはずなのにすいすい読めてしまう。書店で手に取ってどこでもいいから数ページ読んでもらえば、本書の魅力が伝わるはずだ。 -
no.812016/10/26UP
本店・総務部Aおすすめ!
人ノ町 詠坂雄二/新潮社
時代背景も場所も何の説明もなく始まるが、かつての繁栄が滅びた後の世界だという事は判る。主人公の旅人、名前は語られない。「風ノ町」「犬ノ町」「日ノ町」「石ノ町」「王ノ町」の5編から成り、全体で「人ノ町」という物語になっている。そこに描かれているのはシンプルな自然の摂理を背景に、いつの時代も変わらない人間そのものの姿だと思う。独特な雰囲気を漂わせながら語られるストーリーは、時に哲学的で思想的だ。人間の本質的な「業」に起因する進化も滅びも再生も、もしかするともっと大きな自然の、或いは宇宙の過程の一部分なのかもしれない。漫画『火の鳥』や映画『博士の異常な愛情』をちょっと思い出した。
-
no.802016/10/26UP
フェザン店・松本おすすめ!
最後の秘境
東京藝大 二宮敦人/新潮社21世紀―。
世の秘境は世界の隅々まで探検しつくされたと言われている。しかし!
最後の秘境は東京・上野に存在していたっ!!本書の著者・二宮敦人は「!」という人をくったようなタイトルでデビューした小説家だ。
だがある時、身近に輪をかけて強烈なキャラクターがいることに彼は気づく。
……奥さんだ。NINOMIYA’s wifeは、なんとあの「最後の秘境」と巷間に流布されるTOKYO GEI DAIの住人だったのである!妻を人格にしてしまった秘境へ、旦那である二宮敦人は潜入を試みる。そこには秘境と呼ぶには生ぬるい、想像を絶する魔窟のような世界が広がっていた!
※本書はノンフィクションです。