さわや書店 おすすめ本

  • no.172
    2017/9/4UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    1491
    先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見 チャールズ・C.マン/NHK出版

    本書は、あるたった一つの質問に答えるための作品だ。
    著者はその質問に、コロンブスの大陸到着五百周年にあたる1992年に出会った。
    『コロンブスが到着したころの新世界はどんなところだったのだろう?』
    著者は学生時代、南北アメリカの歴史は、コロンブスがやってきた時から始まっているものと習った。それまでは、大した文明もなく、少数の原始的な人間たちが原始的な生活をしていたのだろう――著者を始め、大方のアメリカ人は、そのような認識でいた。
    本書は、その認識を覆す作品だ。
    著者自身は考古学者でも歴史学者でもなく、サイエンスライターだ。様々な研究者に話を聞くことでこの作品を書き上げた。だからだろう、思い込みや先入観のない、データや分析に裏打ちされた形で歴史を見ることが出来ているように思える。著者は、様々な研究から、コロンブスが到着した頃の世界は、もっと人口が多く、文明も栄えていたと書く。そしてこれらは、「多くの一般のアメリカ人さえ知らない歴史」なのだという。本書に載っている事柄が教科書に載る日も、そう遠くないのかもしれない。