さわや書店 おすすめ本

  • no.200
    2017/12/19UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    高砂コンビニ奮闘記
    悪衣悪食を恥じず 森雅裕/成甲書房

    本書は、かつて江戸川乱歩賞を受賞した作家で、現在無職で生きていくのもギリギリの生活をしている著者が、50代半ばにして初めてコンビニアルバイトをした顛末を描いた作品です。
    高砂にあるコンビニは、著者が働き始めてから13ヶ月で閉店してしまったようですが、そこでの仕事、同僚、奇妙なお客さんなどなど、コンビニバイトの裏側を描いています。
    というだけでは特に面白くもなんともないエッセイという感じがするでしょうが、本書は「芸大を優秀な成績で卒業し、作家として辛口の書評家に評価された、これまでずっとフリーでやってきた中高年が、突如生きるためにコンビニバイトをする」という視点の新鮮さがなかなか面白い。著者が働いていたコンビニはちょっと客筋が悪かったようで、日々色んなトラブルが起こるし、スタッフとのめんどくさい人間関係もある。そんな中で、出来るだけ真面目に仕事をしたいと思っている著者のままならなさと、50代にしてコンビニでアルバイトをしているという卑屈さなどが入り混じって、読み物として面白い作品に仕上がっている。