さわや書店 おすすめ本

  • no.109
    2017/1/5UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    雨利終活写真館 芦沢央/小学館

    久しぶりに心温まる傑作ミステリーを読んだなあという気がしている。生きているうちに「遺影」の写真を準備しておきましょうという、「遺影専門写真館」での4つの連作短編集。但し、高齢者向けの本ではない。最初は軽妙なストーリーで、それぞれ単独の話としても完成されているが、途中であれっとなり最後に全体を貫く著者の想いがミステリーの中に込められている。これはあくまでも全体でひとつの物語なのだと思う。
    他人の罪を許す事は難しい。しかし、自分で自分を許せない事を、許すのはより困難だ。心の影の部分を描くのが巧いからこそ、光を浮かび上がらせる事ができるのだろう。