さわや書店 おすすめ本

  • no.562
    2023/8/28UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    雨の中の涙ように 遠田潤子/光文社文庫

    本書の中に、いろいろな映画への言及が少しずつ出てくる。その中でも、個人的に大好きな映画が大事な場面で3つ出てきたので、単純にそれだけで嬉しい。ひとつは映画の中のセリフが本書のタイトルにもなっている『ブレードランナー』、そしてアル・パチーノ主演の『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』、最後にフランク・キャプラ監督の名作『素晴らしき哉、人生!』。どの映画も一見するとハッピーエンドのように見えるが、その過程においてかなり深い問いが内包されているように思う。
    本書は全8話の連作短編集で、これらも一見するとそれぞれハッピーエンドのように思えるが、決してそれだけではない奥深さがある。短編なのでしつこい説明などはなく、各章ごとに余韻を残す終わり方が想像力をかきたてる。最終章「美しい人生」で大団円だ。
    それにしても、「雨の中の涙のように」か…。また『ブレードランナー』が観たくなった。
    IMG_1913