さわや書店 おすすめ本

  • no.283
    2018/10/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    隷属なき道 ルトガー・ブレグマン 野中香方子/文藝春秋

    豊かだが、幸せではない。
    これが、今世界中を覆っている状態だ。
    本書には、様々なデータが載っており、過去と現在との比較によって、現在がいかに豊かになったのか、ということが明らかにされる。客観的に見れば、一昔前と比べて、僕らは明らかに恵まれた世の中で生きているのだ。
    しかし、幸せや豊かさを実感できないでいるのも確かだ。その理由を著者は、「より良い暮らしを思い描けなくなっている」と指摘する。ユートピアを思い描くことが出来ないのだ。
    豊かさを手に入れながら幸せになれない現代社会に対し、著者は独自の提案をする。著者は様々な提案をするが、主なものは「ユニバーサル・ベーシックインカム」「労働時間の削減」「国境の解放」の3つだ。
    その中でも「ユニバーサル・ベーシックインカム」は非常に面白い提案だ。貧しい人々には、条件など付けず、ただお金をあげるだけでいい、というのがその主張だ。フリーマネーをあげる実験は、様々な時代に様々な地域で行われており、そのほとんどで有益だという結果が出ている。回収できるメリット(これは決して、フリーマネーを受け取る人にとってのメリットに限らず、社会全体のメリットだ)が、掛けるコストを上回るという結果が様々に出ているのだ。
    本書は、日進月歩で価値観が激変する現代社会において、人類にとっての明るい未来を導き出す書と言えるかもしれない。