さわや書店 おすすめ本

  • no.143
    2017/4/25UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    量子力学の解釈問題 コリン・ブルース/講談社 ブルーバックス新書

    近代物理学における一つの達成が量子論だろう。この理論がなければ精密機械が作れないと言われるほど実際的な理論でありながら、同時に、僕らが捉えている世界の見方を一変させてしまう奇妙な予測を様々に生み出す理論でもある。アインシュタインが「神はサイコロを振らない」と言ったり、シュレディンガーが「シュレディンガーの猫」というパラドックスを提示したりと、一般にも良く知られたエピソードも多い。
    量子論は、我々に物事の見方の転換を要求する。情報が光速を超えた速度で移動しているように見えたり、人間による観測行為が現象に影響を与えるように見えるなど、それまでの常識では捉えきれない現象が次々に現れる。
    量子論で最も解釈が難しいとされているのが、「量子の非局所性」「状態の収縮」の2つだ。本書はこの2つを、「多世界解釈」という、まさにSF小説のような捉え方で説明しようとする作品だ。文系の人には恐らく難しい作品だが、最先端物理学が捉えた奇妙な世界を楽しめる一冊である。(※2017年4月現在出版社品切中)