さわや書店 おすすめ本
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no.5392023/3/4UP
本店・総務部Aおすすめ!
遠巷説百物語 京極夏彦/角川文庫
遠野を舞台に妖怪・奇談をモチーフにした譚、噺、話、、、。随所に遠野物語へのオマージュも感じさせ、興味深く味わい深く、そして何より面白い。
昔から伝わるこの世ならざるものの話やよく分からない言い伝えには、何かそうした方が都合のいい理由があったのだろうと、本書を読んでそう感じた。昔ならどこにも逃げ場のない土地に住み、夜の漆黒も闇の沈黙も今では考えられないほど深かっただろうと想像する。ちょっとした音でも影でも大きく、そう視えてしまうこともあるだろう。そんな話が口伝えで何代も続いてきたのは奇跡だと思うし、柳田國男ではないけれども日本民族とはいかなるものかも伝えているのかもしれない。そして何よりこれほど長きにわたり語り継がれる話とは今でいうと、後世に残る不朽の名作文学のよう。本書はそんな話を利用した殺さない必殺仕事人のような面々が暗躍する、ダークファンタジー時代エンターテイメント小説とでも言うべき物語だ。
それにしても久しぶりに著者の本を読んで、やっぱり面白いなぁ。「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」も懐かしい。最初は厚さに怯むが読み始めるとどっぷりハマって止まらなくなる。