さわや書店 おすすめ本
-
no.6262025/6/7UP
本店・総務部Aおすすめ!
踊りつかれて 塩田武士/文藝春秋
文春から出版されているのが面白い。週刊誌でスクープされた写真から、巧妙に人物の一面だけを切り取られストーリーを作られてしまう。そしてSNSによる匿名での執拗な個人攻撃による炎上。準公人なら何を言われても構わないのか、私人なら何を言っても許されるのか。そんな状況に一石を投じるブログ【宣戦布告】が公開される。
本書には現代の、やりにくくなったお笑い芸人の現状と、昭和の歌姫の回想が交互に語られる。むやみやたらに「昔は良かった」などと言うつもりはないが、同じ理由で「昔はダメで今が良い」とも思えない。いつの時代でも光と影は均等にあり、結局その時代だけの価値観の中でただ流されるのではなく、どう生きるかということなのだろう。ひとつだけ確かなことは今の一瞬一瞬も確実に過ぎ去り、誰もが元に戻る事はできないという事実。今の人間も昔の人間と同じようにいずれ葛藤の道を歩むことになる。
ちなみに映画『追憶』の原題で主題歌の「The way we were」が本書に何度か出てくる。この曲はメロディーラインだけで哀愁を強く感じさせる、映画音楽の中でも最もいい曲だと思う。映画音楽だと他には『ひまわり』の曲も良かったなぁ。『ゴッドファーザー』『戦場のメリークリスマス』『Wの悲劇』『キッズ・リターン』などなど、名作にはいつもいい曲が流れている。