さわや書店 おすすめ本

  • no.83
    2016/10/26UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    謎の独立国家
    ソマリランド
    そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア 高野秀行/本の雑誌社

    アフリカ東北部のソマリア共和国は、「崩壊国家」と呼ばれている。内戦により無政府状態が続き、国内は無数の武装勢力に埋め尽くされ戦国時代の様相を呈しているという。しかしその一角に、「ソマリランド」という奇跡のような地域がある。無政府状態の中で平和な独立国家を長年保っているだけでも凄いのだが、独自に内戦を終結させ、複数政党制による民主化に移行し、普通選挙により大統領選挙を行った民主主義国家だというのだ。
    ホントにそんな場所があるのだろうか?
    誰もやったことがないことに惹かれる著者は、ほとんどその存在が知られていない「ソマリランド」に乗り込むことに決める。
    そこで高野秀行は、ソマリア文化を決定づける「氏族」という概念を、恐らく世界中の誰よりも完璧に理解し、その上でソマリアの謎に迫っていく。高野秀行らしさが爆発しながら、学術的にも相当価値が高いだろうと思われる、驚異のノンフィクションである。