さわや書店 おすすめ本

  • no.285
    2018/10/29UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    裁判所の正体 法服を着た役人たち 瀬木比呂志+清水潔/新潮社

    「裁判所」というものに、どんなイメージを持っているだろうか。実際に何らかの形で裁判に関わったことがある人ならともかく、多くの人は裁判とは無縁の人生を送っているだろう。僕もそうだ。そういう人は大抵、「裁判所」というものを、「正義や真実が明らかにされる場」と捉えているだろう。裁判の場で審議すれば、何が正しくて何が間違っているのかはっきりするはずだ、と
    そう思っているのであれば、是非本書を読んでほしい。そして、そのイメージを捨て去ってほしい。「裁判所」というのは、ごく一般的な人がイメージするような、正義や真実を体現するような場ではない。そのことを、元エリート裁判官だった瀬木比呂志氏と、「殺人犯はそこにいる」(文庫X)などの壮絶な取材で知られる清水潔氏の対談によって明らかにされる。
    本書で描かれることは、ほとんどの国民が知らないことだ。何故そう断言出来るのか。それは、聞き手である清水潔氏が何度も、「それは知らなかった」「そんな事実、国民の誰も知らないと思いますよ」という発言をするからだ。清水氏は、刑事事件に関わることもあるのだから、一般的な人よりは裁判について知識がある人と言っていいだろう。そういう人でさえ、初めて聞く話ばかりなのだ。
    日本の「裁判」と「裁判所」のヤバさを、本書を読んで理解してほしい。