さわや書店 おすすめ本

  • no.358
    2019/10/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    色彩 阿佐元明/筑摩書房

    まず、表紙の絵が美しい。
    最初目にした時ちょっと気になり、何日か間を置いても吸い寄せられ、いわゆるジャケ買いした。こういう時は本人にとってほぼ間違いないので、本屋に行った時はぜひ試してみてほしい。ちょっと間をおいてもやはり気になるというのがポイントだ。なんちゃら評論家みたいな人の書評で買う場合よりも良かったりする。たまたま目にした自分の勘だけで千いくらの本を買うという行為そのものが、すでにその本の評価を上げているのかもしれない。
    本書はボクサーをあきらめ塗装屋で働いている主人公と、油絵をあきらめて入ってきた新人君の、全くそりの合わない二人を軸にした物語である。二人の微妙な化学反応が、なんてことない日常のちょっとした色彩に変化を与え、心の奥底にしまい込んでいたものを溢れさせる。あまり全てを語らない切り口も、すっきりとしていて気持ちがいい。
    関係ないが、ボクシング・絵画・塗装屋ときて思い出すのが北野武氏である。『キッズ・リターン』『HANA-BI』『アキレスと亀』…。その他全ての映画に共通して言えるのはストーリーと共に色彩感覚や画の構図の素晴らしさだ。それら美的センスの根本は、著書「菊次郎とさき」にあるような気もする。