さわや書店 おすすめ本

  • no.110
    2017/1/5UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    翔太と猫のインサイトの夏休み 永井均/ちくま学芸文庫

    本作は、哲学者である永井均が、中高生向けに書いた哲学の本だ。
    本作は、翔太という中学生とインサイトという名の猫の対話形式によって構成される。翔太は夏休みに入り、毎晩夢を見る。その夢の内容からインサイトと哲学談義に入る。本書を読むために哲学の基本的な知識は不要で、難しい言葉もそこまで出てこないので、中高生でも読めると思う。
    本書は大きく四つに分かれる。
    「いまが夢じゃないって証拠はあるか」
    「たくさんの人間の中に自分という特別なものがいるとは」
    「さまざまな可能性の中でこれが正しいといえる根拠はあるか」
    「自分がいまここに存在していることに意味はあるか」
    「哲学する」というのは、自分の頭で答えのない問いを考えてみることであって、決して過去の偉人の考えを理解したり覚えたりすることではない。著者のそういうスタンスがよく表れた作品だ。「考える」ということの面白さを体験させてくれる一冊だ。