さわや書店 おすすめ本

  • no.520
    2022/9/13UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    終の盟約 楡周平/集英社文庫

    人の「死」にまつわる、様々な問題がこの物語に散りばめられている。肉体的、精神的、物理的、金銭的、医療的、感情的、倫理的にも、すべての方面において唯一の正解などどこにもない。誰もが初めての経験であり、家族も死に方も人それぞれなので、ほとんどの人はあまり準備をすることもできず、気づいたら突然現実と向き合うことになる。
    生まれてきた人間全員に一度だけ必ず訪れる死。その介護や死によって家族や親族に揉め事が起きたり、修復困難な状況にまで陥ったりする事は誰にとっても良い事はなく、そして誰よりも本人が一番無念だろう。
    医療技術が進歩すればするほど、人間の悩ましい問題は尽きる事がない。これからますます超高齢化社会に向かう中で、本書の内容は誰にとっても切実な問題だ。事前に話し合っておく必要とともに、現実に即した医療、介護が制度的に必要だと感じる。最後の時は、せめて穏やかにと、願わずにはいられない。