さわや書店 おすすめ本

  • no.346
    2019/8/26UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    秋山善吉工務店 中山七里/光文社文庫

    いやあ、いい。なんて気持ちのいい小説だ。
    最近はあらゆるメディアで気持ちの悪いニュースを煽るようにこれでもかと見せつけてくる中で、この物語の主人公、大工の善吉はカッコ良すぎる。久しぶりに質のいい直球を見せられてハッとする気分である。誰でも自分の意見を好きなように主張できる、そういう時代だからこそ一周回って改めて光る小説なのかもしれない。ミステリーとしてのラストも見事だ。
    それにしても、まだどこかにいるのかなあ、こういう職人気質の頑固な爺さん。そりゃ身近にいたら現実には困る部分もあるだろうけど、何でもかんでも合理主義的な今の風潮にも疑問を感じる事はある。どんな時代であったとしても、その時の流行りや空気だけに流されずに、何の先入観もなく目の前の事実とまっすぐ向き合うことは大事だと思う。