さわや書店 おすすめ本

  • no.25
    2016/7/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    私の男 桜庭一樹/文春文庫

    地震で家族を失った当時9歳だった花を、海上保安庁に勤めていた当時25歳だった淳悟が引き取る。この花という養女と淳悟という養父の物語だ。
    二人は淫靡な関係にある。花は吸い付くようにしていつも淳悟に寄り添って生きてきた。気持ちだけではなく、身体も寄り添いながら、長い時間を掛けて汚れきってしまった一組の男女。親子という壁を超え、男女という関係さえも超越したところで、二人は二人だけの世界を築いて生きていく。
    物語は、時系列を逆に辿るような形で進んでいく。第一章では、24歳になった花が大企業の重役の息子と結婚する話が描かれ、そこから少しずつ何か皮を剥いていくような感じで時間を遡っていきながら、禁忌の愛を描き出していく作品だ。