さわや書店 おすすめ本

  • no.343
    2019/8/6UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    福袋 朝井まかて/講談社文庫

    江戸の乾いた風が吹き抜ける、8話の傑作短篇集。最初の「ぞっこん」だけで心をすっかり掴まれて、後はもう安心して名作古典落語を観ているかのようにラストの「ひってん」まで突き進む。いやあ、すっきりとしていて何とも言えず、いいなあと思う。
    この「いいなあ」という感じを言葉にしようとすると一気に野暮になってしまう。ただ、説明できないこの好ましい感覚が短い文章を読むだけで、一発で伝わるという事は現代の日本に於いてもなお、この「粋」がどこかに残っているという他ならぬ証拠だろうと思う。本書のような小説を読むことでいいなあと感じることができるのを、ちょっと誇らしげにも思う。