さわや書店 おすすめ本

  • no.219
    2018/3/14UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    神坐す山の物語 浅田次郎/双葉文庫

    これは娯楽小説ではない。著者の実体験をモチーフにした物語。神社仏閣の敷地に足を踏み入れた時の、厳かで静謐な空気を感じるような小説だ。八百万の神々が宿る国、日本特有の自然観や畏れが描かれている。昔話、お伽噺、怪談、奇談、言い伝え、等々…何年経っても心に残され、語り継がれるべき物語のひとつである。不自由さや不確実さの残る余地が少なくなった時代だからこそ、忘れてはならない何かが含まれているような気がする。例えば津波がここまで来たという事を示す石碑と同じように。心にくさびを打ち込むように。