さわや書店 おすすめ本

  • no.593
    2024/6/4UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    神の悪手 芦沢央/新潮文庫

    5つの短編集。やはり表題作「神の悪手」が秀逸だと思った。勝負の世界の張りつめた緊張感に震える。勝敗が全ての世界の中で、自分自身との葛藤にどう向き合うのか。最終的に打つ一手は果たして。
    ラストの一編「恩返し」だけが将棋ではなく将棋駒を作る駒師の物語。こちらもじっくりと自分に向き合うことで地に足のついた仕事、職人魂を開眼させる。
    本書は、いわゆるどんでん返しを狙ったようなミステリーとは少し違う。勝負の世界に身を置く者の孤独と心の機微にしっかりと焦点を合わせた、人間の物語なのだと思う。