さわや書店 おすすめ本

  • no.410
    2020/8/2UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    盆土産と十七の短篇 三浦哲郎/中公文庫

    無駄のない、すっきりとした文章。朴訥とした短い作品の中に、味わい深さだけを残す。主張やテーマなどを思わせる記述はほとんどないが、作中人物の佇まいだけでも、それを充分に伝え切っている。洗練された職人技の短篇集である。
    本書は中学校・高校の国語教科書に収録された作品を中心にまとめている。最初の「盆土産」はお父さんが盆土産にえびフライを買って帰って来る話だ。中学時代、この作品を題材に授業を受けたはずだが、先生がどのように教えたのかは申し訳ないけど全く覚えていない。ただ、この話自体は30年以上経った今でも鮮明に覚えている。理屈ではなく、これが作品の力なのだろう。