さわや書店 おすすめ本

  • no.204
    2018/1/9UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    生ける屍の死 山口雅也/創元推理文庫

    トゥームズヴィル(墓の町)と名付けられた、ニューイングランド郊外の町。そこはバーリーコーン家が営む「スマイル霊園」という葬儀屋で成り立っている町であり、その名前と共に「死」に彩られた町である。
    その一帯で、奇妙な話が持ち上がる。一度死んだ人間が蘇るというのだ。ニュースでも取りあげられるほどで、次第に世界は、「死者の蘇り」という事実を受け入れなければならなくなってくる。
    そんな状況の中、バーリーコーン家の当主・スマイリーの遺産分配の関係で一族は集められた。しかし、スマイリーの死を待たずして、なんと日本人の血も併せ持つグリンが毒殺されてしまう。「生ける屍」として蘇ったグリンは、自らの死の真相を暴くべく、自分が死んでしまっていることを隠しながら調査に乗り出すが、スマイリーの死と前後して霊園内で死者が相次ぐ…
    「何故、死者が蘇る世界で殺人という行為を繰り返すのか?」
    これに対する論理の見事さが、そのまま作品の質になっている。あらゆる宗教・文学・歴史・医学などの知識をふんだんに織り交ぜ、独特の「死生観」を築き上げながらラストまで突き進む作品の凄みを感じて欲しい。