さわや書店 おすすめ本

  • no.579
    2024/1/22UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    猿の戴冠式 小砂川チト/講談社

    数ページ読んだだけで、著者の感じが出ていて久しぶりと思う。今回も芥川賞こそ逃したものの、本書の内容とも相まってむしろ誇らしい。無冠の帝王でいいんじゃないか。
    読者に優しいとは言えない。かなりの変化球なので最初は幻惑させられる。途中これで合っているのか不安にもなるが全く問題はない。基本的にはいろいろやらかした主人公瀬尾しふみ1人の物語なのだ。あとはこれをどう読もうが読者にお任せの投げっぱなしジャーマン。個人的には心に大きな傷を負った後の野性的自然治癒力、復活への第一歩を踏み出す勇気の物語だと認識している。ただし、あらゆる評論や解説など一切寄せ付けないほどの孤高さと力強さがこの物語にはある。
    前回の「家庭用安心坑夫」の時もそうだったが、すべて読み終わって内容を思い返した時に深く納得させられるのである。