さわや書店 おすすめ本

  • no.516
    2022/8/15UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    深夜プラス1 ギャヴィン・ライアル/ハヤカワ文庫

    ミステリーや冒険小説などの要素を含む名作ハードボイルド。ハードボイルドというのが実際何を意味しているのかよく分からないが、形の描写だけでその生き様をも表現するひとつの様式美だと思っている。敵の攻撃を受けながらも主人公が要人を目的地まで送り届けるというミッションで、要人の秘書と1人のガンマンも同行する。その中で主人公とガンマンは己の矜持と、プロフェッショナルとはどんなものかを形で示してくれる。謎解きなんかを気にせずに、ただ、ストーリーに身を任せるのがハードボイルドの唯一正しい読み方だろう。
    この小説で、もうひとつの要素が「アル中」だ。映画ではよく「脱獄ものに外れなし」とか言うように、本では「アル中もの」に外れはないと思っている。ハードボイルドの名作「八百万の死にざま」(ローレンス・ブロック著)や実体験をベースにしたという「今夜、すべてのバーで」(中島らも著)などは特に濃厚な「アル中小説」だ。人間の弱さと愛おしさ、そしてアル中の怖さと生きる本質をリアルに描き、極上の小説に仕上げている。それにしてもアルコールは恐ろしい。そして、世間的にはいつか煙草と同じ運命をたどるかもしれないので、せいぜい飲めるうちに飲んでおくことにする。