さわや書店 おすすめ本

  • no.113
    2017/1/10UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    消失グラデーション 長沢樹/角川文庫

    高校生の椎名康は、校内の一角に<背徳の死角>と呼ぶスペースを確保し、気に入った女子生徒を連れ込んではいやらしいことをしている。そんな現場に樋口真由が乗り込んでくる。彼女は、ヒカル君と呼ばれる、美少年だと噂される窃盗犯を張っていたのだが、そこに椎名が映り込んで邪魔だと文句をつけてきた。
    一方、藤野学院の女子バスケ部は全国レベルの成績を残すほど強い。その立役者が、去年まで在籍していたエース・伊達と、伊達と完璧なコンビを組んだ網川緑だ。しかしその網川は今、バスケ部の中で孤立し始めている。ふとしたことから椎名は、それまで遠目に見るだけの存在だった網川と関わることになるが…。
    この内容紹介だけから伝わらないだろうが、本書は読む者の度肝を抜くミステリだ。しかしそれ以上に、青春小説として、学園小説として素晴らしい。高校という狭い空間の中に淀む鬱屈や支配が絡まり合うことで起こる人間模様は、ミステリとしての仕掛け以上に衝撃的だ。