さわや書店 おすすめ本
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no.5512023/6/2UP
本店・総務部Aおすすめ!
永遠と横道世之介 吉田修一/毎日新聞出版
終わってしまったな。と思う。三作楽しませてもらった横道世之介に感謝したい。この男、何の変哲もないフツーの男なのだが、なんだか妙に懐かしく、そして安心させられる。これまで、いろいろな登場人物が出てきては世之介を思い出し、当時の自分と今の自分を考えさせられている。この物語は主人公自身よりも、世之介を見て一瞬と永遠を感じ取る周りの人々のまなざしが美しいのだと思う。そして読者もその一員だ。
正直、最初の「横道世之介」だけでもうこの物語は完成されていると思う。「おかえり横道世之介」と完結編の本書は、いわばファンサービスのようなものだろう。間違いなくファンである自分にとってはもちろん何の異存もない。この三作は世之介以外の登場人物が全部別々なのでどれから読んでも問題はない。ただ、やはり最初の「横道世之介」は読んでほしいなと思う。それと、映画『横道世之介』。吉高由里子がいい。こちらも間違いなく傑作映画である。