さわや書店 おすすめ本

  • no.394
    2020/4/16UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    死ぬ瞬間 E・キューブラー・ロス/中公文庫

    幼い頃からテレビで見ていた志村けんさんの死が、未だどうにも信じられない。それと同じように、人は少なくとも自分だけは当分死なないと思い込んで生きているようだ。でも実際、年齢に関係なくいつその瞬間が訪れるかは、誰にも予測できない。他者の死を悼み、自分の死を想う事は、どう生きるかと表裏一体である。生も死も一度限りのものだとすれば、本書もやはり、死ぬまでに一度は読んでおくべき名著の一つだろう。
    映画『悪の法則』の中にこんなセリフがある。――“最期の時”が迫り来ると知る者にとって、死は別の意味を持つ。あらゆる現実の消滅は、死を受け入れてもなお認めがたい概念だ。最期の時に、自分の人生はどんなものであったのか、ようやくその真の姿を知る事ができるのだ――。この原作者コーマック・マッカーシーの作品には全て、必ず同様のメッセージが込められる。老いや死からは誰も逃れることはできないし、人生は一方通行で決して取り戻す事などできない。かなりグロテスクな形でそれを表現するので、こちらは読む人を選ぶ作家である。ただ、時に人は、死を想う事が必要なのだろう。