さわや書店 おすすめ本

  • no.449
    2021/1/26UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    死にゆく者への祈り ジャック・ヒギンズ/ハヤカワ文庫

    読んでいない過去の傑作小説はまだまだ山ほどある。ページをめくるのももどかしく、上質な映画を観ているかのように一気に読み終えてしまった。代表作「鷲は舞い降りた」で有名なジャック・ヒギンズ。訳者あとがきによると、著者本人が自分の作品の中で一番好きな小説は本書であるという。
    暗黒街の顔役から依頼され殺人を請け負ってしまう主人公。その殺人をたまたま目撃しながらも警察に口を割ろうとしない神父。不器用な生き方しかできない、哀しい過去のある2人のハードボイルド・サスペンスと言っていいだろう。自らの矜持を貫き、死に場所を求めて生きるような主人公に対し、神父はなんとかその魂を救済することができないかと、苦悩しながら祈りを捧げる。
    クールでスマートな生き方の対極にあるような男の生きざまに、最近ではあまり思う事も少なくなってしまったある種の憧れを感じる。