さわや書店 おすすめ本

  • no.310
    2019/2/5UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    桶川ストーカー殺人事件 遺言 清水潔/新潮文庫

    2016年に僕は「殺人犯はそこにいる」という作品を読んで、「文庫X」という企画を行った。清水潔の作品を読むのは、「殺人犯はそこにいる」が初めてだった。もし「桶川ストーカー殺人事件 遺言」を先に読んでいたら、こちらを「文庫X」として売り出していたかもしれない。そう感じるほど、こちらも全国民に読んでほしい作品だった。
    この事件をきっかけにして、「ストーカー規制法」が制定された。つまりこの事件までは、ストーカーという存在に対して警察が出来ることは何もなかった。それは確かに事実ではある。民事不介入を原則とする警察が、犯罪行為と認定しにくい行為をしているストーカーに手出しが出来ないのは、分からないでもない。
    しかし、本書を読めば、被害者である詩織さんの対応をした警察がただ怠慢だったということが分かるだろう。
    『詩織は小松と警察に殺されたんです』
    僕ら市民は、警察という暴力装置が、正しくその暴力を行使してくれることを願うしかない。罪を犯した人間を捉え、罰を与え、罪を犯していない人間の安全と平和を守る。そのために警察には強大な権力が与えられているはずだ。しかし本書では、その権力が、警察の体面を守るために罪のない個人を貶める目的で使われたことがはっきりと記されている。
    僕らは、こんな世の中に生きているのだ。