さわや書店 おすすめ本
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no.5842024/3/20UP
本店・総務部Aおすすめ!
最後の医者は桜を見上げて君を想う 二宮敦人/TO文庫
頭で考えることやデータで見る事と、実際に体験する事とではその意味が大きく異なる場合が多い。まして身近な人あるいは本人の「死」という、一度きりの体験と対峙した場合、冷静な分析など何の役に立つだろう。理論を超えた厳粛さの他に言葉はない。
本書は真逆の極端な理論を持つ2人の医師とその中間の医師による死生観の物語だ。どちらの考え方も筋が通っていて、どちらが正しい正しくないということはない。ただ、年齢に関わらず誰もが明日死ぬかもしれないという事実は忘れて或いはそこから目を逸らして生きているが、いずれにしても人間の死亡率は100%だ。
「さわや春のおすすめ」フェアの中の1冊。フェアは割と後ろ向きのものが多いかもしれないが、希望に満ちた春の季節に敢えて、一生モノの読書体験をという思いでセレクトしている。いい事ばかりじゃない世の中で、今読んでおくべき10冊。フェアの中の「生きるかなしみ」(山田太一 編)には「ふたつの悲しみ」(杉山龍丸)という章がある。これには言葉を喪い、ただ涙する他ない。こういうのを頭で考えて冷静に解説できる人など信用できない。