さわや書店 おすすめ本

  • no.499
    2022/4/9UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    時をかける少女 筒井康隆/角川文庫

    これまで何度も映像化されているが、私のようなオッサン世代には原田知世なのである。これは絶対なのです。演技が上手いとか下手などという次元の話ではない。当時の原田知世にしかできない奇跡なのです。
    さて、前置きはこのぐらいにして筒井康隆氏原作の本書は1965年、学研の「中学三年コース」から連載が開始され「高1コース」まで全7回で連載されていたそうな。著者のブラックな社会風刺短編集などを考えると、当時はかなり攻めた連載決定だったのではないかと推察する。今では発売していない連載の「学年誌」も懐かしいが、小説の文章自体がSFを扱いながらもどこか郷愁に似た懐かしさを感じさせる。痛烈なブラックユーモアを書く作家だからこそなのだろう、中高生向けに書かれた文章が別な角度から大人にも味わい深い。この短いストーリーが時を経る事でますます円熟した趣を醸し出す。古典の条件とは時間の経過に耐えうる普遍性があり、時代によって新たな価値が生まれることだとすれば、著者の作品とはそういうものなのだと思う。