さわや書店 おすすめ本

  • no.566
    2023/10/5UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    新編 宮沢賢治詩集 宮沢賢治/新潮文庫

    (あめゆじゆとてちてけんじや)
    中学校の教科書に出てきた「永訣の朝」は、本書の大半を占める「春と修羅」からの一節だ。深い哀しみと空虚な怒りが通底するようなこの詩集は全編、妹の死という受け入れ難い現実に直面した困惑から成るのだろう。
    「永訣の朝」とそれに続く「松の針」「無声慟哭」だけがはっきりとした意味を持ち、他は普通に読むと全く意味が分からないものも多い。ただ、いつ読んでも新鮮な驚きを感じさせる。意味なんて実はあまり関係ないのかもしれない。これは詩というよりも、やはり心象スケッチ以外の何ものでもないのだから。絵画でも文学でも映画でも、それぞれ自由に解釈することができ、その幅が広く懐が深い作品ほど名作と呼ばれる。
    宮沢賢治没後90年。まさに時代を超えた名作なのだと思う。