さわや書店 おすすめ本

  • no.384
    2020/3/14UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    敵の名は、宮本武蔵 木下昌輝/角川文庫

    時代小説は歴史的な事実と共に、ある意味現代小説よりも高い想像力やオリジナリティが求められるジャンルだと思う。同じ題材であっても見方によっては悲劇にも喜劇にも、悪人にもヒーローにもなりうる。専門家がどう言おうと実際本当のところは誰にもわからず、想像するしかないのだから。
    誰もが知る剣豪、宮本武蔵。その生き様を敵の目から見た光の当て方で、見事なエンターテイメントに仕上げている。剣による命のやりとりももちろん出てくるが、美術的な視点が印象深く心に残る。ともかく『枯木鳴鵙図』(こぼくめいげきず)などの水墨画をいま一度しみじみと眺めてみたい、そんな気にさせられる小説である。