さわや書店 おすすめ本

  • no.414
    2020/9/14UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    戦場のコックたち 深緑野分/創元推理文庫

    戦争映画の中で、個人的にベストは『地獄の黙示録』だと思っている。戦争の悲惨さや反戦だけを訴えているわけではなく、人間の二面性を描いているからだ。人間が本来持っている善良さと狂気。状況によっては誰しも、光と影のように同じ振れ幅をもって現れる。そういうものかもしれないと自覚する人と、自分だけは絶対に違うという人とでは決定的な差があるように思う。真面目な人ほど危険である。例えばそれは、自分だけは詐欺に遭わないと思う人ほど詐欺に遭いやすいのと同じように。
    本書はミステリーという形式を取りながらも、本質的には人間の二面性を描いていると思う。戦争という異常な状況下であぶり出される人間本来の光と影。その先に、戦争や人種差別などの無意味さが浮き彫りになる。主人公が料理に興味を持つきっかけでもある、祖母の存在とその教えが非常に効いている。