さわや書店 おすすめ本

  • no.364
    2019/11/18UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    悪の脳科学 中野信子/集英社新書

    「笑ゥせぇるすまん」を題材にした脳科学。著者と同じく中学生の頃にテレビで初めて笑ゥせぇるすまんを見た。バブルの時代に暗いブラックジョークのようなストーリーが、子供心にもなぜか人間の本質を衝いている気がして見入っていた。説明する能力はなくても若い頃に感じる直感のようなものは意外と正しい。
    本でも映画でも或いは絵画でも写真でも、単純にそこに書いてあるものとは別に、作者が描いているものを感じ取れるかどうかは評価の分かれ目だと思う。こういう部分の良さは、いくら言葉を尽くしても伝わらない人には1ミリも伝わらないし、逆に伝わる人には説明しない方がより深く伝わる。笑ゥせぇるすまんはそういう種類のものだろう。北野武氏やデイヴィッド・リンチ監督の映画などにも同じ事が言えるかもしれない。
    本書は「ココロのスキマ」を現代脳科学の観点から完璧に解説した本である。ただ、特に若い人はあまり正解だけを求めずに、よく分からないけど妙に心に残るというものを大事にしておいた方がいい。おそらくそれは、一生変わらないテーマに近いはずだ。