さわや書店 おすすめ本

  • no.442
    2020/12/15UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    幻の女 ウイリアム・アイリッシュ/ハヤカワ文庫

    印象的な一行目で始まるミステリーの古典的名作。
    ロジックだけがいかに素晴らしくても名作と呼ばれるとは限らない。本書はテクニカルな謎解きだけでなく、文章自体が洒落ていて、どこか匂い立つような味わい深さがある。情景や人物の描写など普通に小説として面白く、そしてラスト鮮やかにミステリーが解き明かされるところが、名作と呼ばれるゆえんだろう。
    どんな種類の作品でも、時代の変化に関わらず古典として後々まで残るような物語には、それなりの理由がある。新しいものをどんどん追い求めるのもいいが、古いものに新しさを見出すのも悪くはない。古いもので今でも残っているものといえば結局、普遍的な本質を衝いているものばかりなのだから。