さわや書店 おすすめ本

  • no.445
    2020/12/28UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    家族じまい 桜木紫乃/集英社

    ――ふと、終わることと終えることは違うのだという思いが胸の底めがけて落ちてきた。心地よいパーカッションの音がする。新しい一歩を選び取り、自分たちは元家族という関係も終えようとしている。――自発的に「終える」のだった。
    終いではなく、仕舞いだ。(本文より)

    ちょっと後ろ向きのようなタイトルだが決してそれだけではなく、再生と希望の物語だと感じた。五人の女性の視点から見たそれぞれの家族の姿が、連作短篇として五話描かれている。個人的には第四章「紀和」が好みだ。どの話もあまり説明しすぎることなく、淡々とした描写の中で複雑な心の動きが表現され、明確には書かれていない部分も想像させる。年末のこの時期、自分自身の来し方、行く末も思う一冊だ。ふと、ロドリゴ・ガルシア監督の映画『美しい人』を思い出す。
    今年はさんざんな一年で、年末年始なく大変な思いをされている方も大勢いると思う。自分自身も含め、来年はそんな全ての人に、それぞれの再生と希望が少しでも訪れることを願いつつ。