さわや書店 おすすめ本

  • no.251
    2018/6/26UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    宇宙は「もつれ」で できている ルイーザ・ギルター/講談社ブルーバックス

    「量子論」は、アインシュタインが生み出した「相対性理論」と並んで、20世紀物理学の至宝と呼ぶべき物理理論だ。「相対性理論」とは違い、「量子論」は多数の物理学者の喧々諤々の議論の末に形作られた。
    「量子論」はあまりにも僕らの日常感覚からかけ離れるものだったために、「量子論」を認めない人も多くいた。その中の一人が、アインシュタインである。「神はサイコロを振らない」という彼の有名な言葉は、「量子論」に対して向けられた言葉だった。
    アインシュタインは「量子論」のすべてを否定していたわけではない。なにしろ、「量子論」の根幹にある、「原子は粒でもあり波でもある」に通ずる概念を最初に説明したのはアインシュタインなのだ(彼は、光は波でもあり粒でもあるとする「光電子効果」の説明によってノーベル賞を受賞した)。しかし彼は、「量子論」は不完全な理論だと思っていた。そしてその不完全さを説明するために考えだしたのが「EPRパラドックス」という思考実験であり、そこで初めて投げかけられたのが「もつれ」という奇妙な振る舞いだ。
    「量子論」は、「もつれ」との闘いだったと言っていい。そして、この「もつれ」を理解しようと多くの人間が奮闘したお陰で、「量子論」は完成し、理解が進んだのだ。
    そんな「もつれ」が、僕らの生活にどう関係するのか、と思うだろうか。いや、大いに関係するのだ。何故なら、今研究が進められている「量子コンピュータ」は、まさに「もつれ」を利用している。そして、「量子コンピュータ」が実用化されれば、僕らの生活はまさに一変するだろう。