さわや書店 おすすめ本

  • no.427
    2020/11/5UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    女ともだち 早川義夫/筑摩書房

    亡くなった妻に捧ぐ鎮魂歌。著者の曲はほとんど知らないが、カバーされた『サルビアの花』には聴き覚えがある。
    音楽でも絵でも映画でも文学でも、無から何かを生み出す作家という人は凄いところで生きているのだと思う。自分をさらけ出し、飾らずに自分自身の中から溢れ出たものを表現する、格好つけないところにある格好良さ。どこからか借りてきたようなもので人は感動しない。著者はその繊細で真っ直ぐな感覚と共に、まさに身を削りながら創作活動をしているように感じた。そして本書を捧げる奥さんとの思い出には、当たり前と思っている今の日常でも、決して当たり前ではないという事に気付かされる。
    かけがえのないもの。本当の意味ではそれは無くなってからしか見えないものかもしれないけれど、少なくとも今をもっと大切にしたい。たまにこういう本を読むと痛切にそう思う。