さわや書店 おすすめ本

  • no.314
    2019/3/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    女たちよ! 伊丹十三/新潮文庫

    あらゆるものの「本物」「正統」を語る1968年発行の本書。それが嫌味にならずに読めるのは「本物」を語りながら、その知識だけでなく人間の「本質」をも語っているからだと思う。なるほど、こんな面白いエッセイを書く人の映画が面白くないはずがない。『マルサの女』は文句なく面白いし、著者らしさが一番色濃く出ているのは『タンポポ』だろう。
    先日、現在88歳のクリント・イーストウッドが監督・主演の映画『運び屋』を観に行った。過去の作品に比べると地味ながら、あらゆる無駄を削ぎ落としたような監督自身の集大成とも言える見事な作品であった。
    伊丹十三が亡くなったのは1997年。もう20年以上も前になる。生きていれば今年86歳だったはずの著者が、もし今映画を撮るなら現代をどう切りとるのか。あるいは自分自身をどう表現するだろう。著者の作品をもっと観てみたかった。
    ちなみに本書は女性に向けた本ではないものの、男女を問わず面白いはずであり、そう願いたいという事は申し添えておく。