さわや書店 おすすめ本

  • no.377
    2020/1/25UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    天使は黒い翼をもつ エリオット・チェイズ/扶桑社

    本書の解説に、『ワイルド・アット・ハート』という映画に関する記述がある。映画の原作は本書にインスパイアされているのではないかとの事。確かに、まるで上質なクライムサスペンス映画を観ているかのように止まらない疾走感がある。そうかと思うと、急に立ち止まり深く考えさせられるような部分もあり、緩急、硬軟織り交ぜて胸に迫る。全体としては全てが終わった後の回想のみ、一人称のハードボイルド調で語られる。エンターテイメント性と独特な文学的表現が同居する稀有な小説だった。
    映画で言えば上記作品の他、『カリートの道』『ヒート』『バウンド』『パルプ・フィクション』『レオン』『ラスト、コーション』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』などが刺さる人には、おそらくこの小説も楽しめるのではないかと思う。
    愚かさ、弱さ、傲慢さ、醜さ、それら全てを含めた人間の愛おしさ、美しさを極上の犯罪小説に仕上げた傑作である。