さわや書店 おすすめ本

  • no.202
    2017/12/27UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    天使のナイフ 薬丸岳/講談社文庫

    妻の祥子を少年三人組に殺された、コーヒーショップの店長桧山。当時犯行を行った少年らは、少年法の恩恵の元に、大した罪に問われぬまま、社会に戻ってきた。桧山は、以来止まってしまった時間と、否応なく進み続ける時間の中で、懸命にふんばってきた。
    今桧山は、一人娘の愛美とともに、穏やかな生活を送っている。しかしそんな日常は、刑事の登場によって一気に突き崩される。当時、祥子の事件を担当していた刑事がこう告げたのだ。
    少年Bが殺された。
    少年Bとは、祥子を殺した少年三人のうちの一人。コーヒーショップ付近にある公園で殺されているのが見つかったのだという。
    一体誰が何のために少年Bを殺したのか。桧山は、少年Bが過ごした更正施設や、少年AやCについても調べていくようになる。今起きている事件は一体何なのか。そして、過去のあの事件は一体何だったのか…。
    桧山という男が、少年法や社会という壁に立ちすくみ、それでも前進に繋がると信じて行動を起こす物語だ。中盤から終盤にかけての展開の速さと見事さには舌を巻かれる。