さわや書店 おすすめ本
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no.4022020/6/11UP
本店・総務部Aおすすめ!
夜中の薔薇 向田邦子/講談社文庫
やはり、見事としか言いようがない。人や物を見る目の確かさ、深さ。それだけでなく、文章から滲み出る何とも言えない味わいと品の良さ。自分の貧弱な語彙力ではこのあたりをうまく説明できるわけもなく、これはもう読んでもらうしかない。
尤も、この良さは“粋”の領域を含んでいるので、説明しようとすればするほど実際から遠ざかるというか、そこにあるのは確実に判るのだけれども掴もうとすると逃げられてしまうようなものだ。多くを語らず物事の本質を見抜き、微妙なさじ加減で嫌味にならずに“粋”を感じさせる著者の文章は、やはり見事という他、適切な言葉が見当たらない。
航空機事故がなければ今年91歳。時代は大きく様変わりしたが、もし生きていたら今の時代をどう斬ったかをどうしても思わずにはいられない。また、今の人がこれをどう読むのかも興味深い。読み継がれ語り継がれるべき、時代を象徴する人物のひとりであることは間違いない。