さわや書店 おすすめ本

  • no.103
    2016/12/19UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    地球最後の日のための種子 スーザン・ドウォーキン/文藝春秋

    本書は、作物の多様性を守ることで農業を守り、かつ世界中から飢餓をなくすという信念に沿って行動し、国際的な農業のあり方を変えた一人の伝説の植物学者、ベント・スコウマンの生涯を追いつつ、世界の食料がどう守られているのかを知ることが出来るノンフィクションだ。
    『タイム』誌はかつてスコウマンを、「人々の日々の生活にとって、ほとんどの国家元首より重要な人物である」と評したことがある。しかし僕を含め多くの人が、彼の業績を知らない。
    背景には、現代的な農業が抱える問題がある。植物などの品種改良をする育種家が素晴らしい品種を開発したとする。当然、世界中の農家がその品種を栽培したいと思う。しかしそうなればなるほど作物の多様性が失われ、例えば何らかの伝染病が発生した時にすぐに危機に陥ってしまう。スコウマンの活動はそのリスクを低減させるものだ。
    スコウマンの理念と実践は、我々の「食」を根本から支えているのである。