さわや書店 おすすめ本

  • no.556
    2023/7/15UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    君たちはどう生きるか 吉野源三郎/岩波文庫

    宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』を観てきた。集大成の作品らしく、今までの作品のエッセンスがオリジナルストーリーに織り込まれた大団円だった。
    1979年公開の監督デビュー作『ルパン三世カリオストロの城』から始まり次の『風の谷のナウシカ』、その後のスタジオジブリ作品の素晴らしさは今さら言うまでもなく、今観ても全く古さを感じさせない。その全ての作品の中心を貫くテーマが本書「君たちはどう生きるか」だったのかとさえ思う。
    どんな時代、どんな世界でも人間が生きていく以上、本質的に抱えている葛藤や矛盾。本書はやさしい言葉で書かれてはいるものの、その内容は心の深淵を探る非常に奥深いもので、子供から大人までそれぞれに充分読み応えのあるものとなっている。悲しみ、怒り、苦しみなどの負の感情をも含め全てを抱えながら、人としてどう生きるか。宮崎駿監督はアニメーションを通じて常にこの事を問いかけてきたのだと思う。本書自体が映画の重要な場面で出てきて、ラストにもごくさりげない形で出てくる。それだけ監督にとって特に思い入れの深い本だったのだろうと推察できる。