さわや書店 おすすめ本
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no.2632018/8/14UP
本店・総務部Aおすすめ!
千年、働いてきました 野村進/新潮文庫
日本人は新しいもの好きで、好奇心を持って流行を追いかけるのと同時に、古いものに対する特殊な敬意があるようにも思う。そのあたりのバランス感覚に、他の国にはない独特の価値観があるのかもしれない。歴史的な背景もさることながら、職人の技などテレビでちょっと見ただけで、無条件に偉いと思ってしまう。職人さんが偉いとかお百姓さんが偉いというのは、先生は偉いとか代議士が偉いというのとは種類が違う。歴史か信仰か、あるいは自然環境がそうさせるのか。
始まったものには必ずいつかは終わりが来る。しかし、企業がその自然の流れに逆らって永く継続させる事は並大抵の努力で成し得るものではなく、且つ存続する事によって初めてその価値は生まれる。本書は日本の老舗製造業の、もの凄さを垣間見ることができる。
いつもながら全く関係ない話で恐縮だが、先日ルミエールで『ファントム・スレッド』という映画を観た。オートクチュール(高級仕立服)職人と若い女性の物語なのだが、これがなかなかに恐ろしくも素晴らしかった。完璧なる職人の仕事や生活に狂いが生じたのは「愛」のためなのか?職人の完璧な仕事も、どこに墓穴があるか分からない。『ブギーナイツ』『マグノリア』『インヒアレント・ヴァイス』…、ポール・トーマス・アンダーソン監督自身も完全に映画職人と言えよう。