さわや書店 おすすめ本

  • no.548
    2023/5/9UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    刀と傘 伊吹亜門/創元推理文庫

    ミステリーとしての謎解きもさることながら、動機や心の動きへの洞察に時代小説としての奥深さを感じる。最終的には読者に委ねるような幕切れも、余韻を残しつつ再度物語に思いをめぐらされた。本書は時代小説とミステリー双方の良さが凝縮した、切れ味の良い見事なブレンドだった。
    幕末から明治にかけての混乱期の物語だが、時代小説をあまり読まない人でも細かい事は気にせず読み進めて問題なく、またミステリーは関係ないという人にも安心して味わうことができる時代小説だと思う。時代小説だろうがミステリーだろうが、SFだろうが文学だろうがノンフィクションだろうがコミックだろうが、何であれ本という形式を通じて伝えたいところは、形は違えども一緒の部分が本質的にはあるのだと思う。